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2023.07.04

クリエイティブに触れて|ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展②

クリエイティブに触れて 

今年の春、日本橋高島屋で開催されていた「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」に訪れました。前回の記事では、様々なプロダクトから見えてきた北欧の暮らしの価値観や美意識について書いてみましたが、今回は特に私が心奪われたイッタラのガラス製品について書いてみることにします。

照明によって、全く印象が変わったサヴォイベース

柔らかい透明な飴細工を両手で持って、指にえいと力を加えたような、ぐにゃりと曲がった容れ物。一見すると何に使うか分からない、いや、何を入れてもいいのかもしれない、アルバ・アアルト〈Alvar Aalto〉の有名なフラワーベース。
目にしたのは何年か前だと思いますが、実を言うとその時はアートだなあとか、オシャレだなあという単純な感想しか持っていませんでした。
それが今回、全く違う印象を持って目に飛び込んできたのです。

「あ、水面だ。」

それは太陽の光できらきらと輝く、水面の波の影でした。晴れた森の中の静かな湖の傍に自分が佇んでいるかのような清々しさ。浮かぶのは行ったこともない北欧の湖沼。
アアルトは光が透けた時の影の形まで予想していたのでしょうか。
だとすると晴れた日の美しい自然の一コマを、部屋の中に持ち込んで長い冬の中に思い出してみようと思ったのでしょうか。
巨匠の思考をあれこれ推し測りながら、この作品がフィンランドガラスのアイコンたる所以が分かったような気がしたのでした。

アルバ・アアルト〈Alvar Aalto〉のサヴォイベース〈Savoi vase〉

自然界のデザイン

また別の作品の影は、波紋が広がったような丸く鮮やかな緑。
「灯台」と題されたこの燭台は、火が灯ると暗闇にぼんやりあたたかな色を足してくれそうで、カラフルなセロファンで作った影絵のようだと、昔夢中になった工作遊びをふと思い出しました。

オイバ・トイッカ〈Oiva Toikka〉のライトハウス〈lighthouse〉

同じく、オイバ・トイッカ〈Oiva Toikka〉がデザインした、「露のしずく」を意味するカステヘルミ〈Kastehelmi〉はその名の通り、朝日を浴びて連なる真珠のようにきらめく朝露からインスピレーションを受けたそう。北欧デザインから感じる有機的なあたたかさやどことなく感じる懐かしさの理由は、きっとこうしたインスピレーションの源泉にあるのでしょう。
しずくのようなガラスの凹凸が生み出す影はまさしく自然の装飾です。

オイバ・トイッカ〈Oiva Toikka〉のカステヘルミ〈Kastehelmi〉

「水面」や「光の影」にどうにも心惹かれる私。
作品を目にした時に、ふと脳裏に子どもの頃の記憶や好んだ遊びが思い起こされて、ああだからこのデザインが好きなのかと腑に落ちることも。と同時に、デザインの源泉や潮流はやはり自然に回帰するのかもしれないなんてことを考えながら、北欧デザイン展を後にしたのでした。

Written by
FUMIKO TAIRA

WEB DESIGNER

前職では輸入玩具や公園の大型遊具を扱う専門商社で公園や遊び場づくりに携わる。 ひとつのプロジェクトを形にしていく中でプロダクトやサービスの価値や想いを届ける仕事に興味を持ち、WEBデザインの世界へ。好奇心旺盛で常に何かにハマっているが、特に音楽と旅と映画が好き。うどん県出身。