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2023.04.11

クリエイティブに触れて|ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展①

クリエイティブに触れて 

少しバタバタしていたのが落ち着いたのもあり、久しく行けていなかった美術展や展覧会を観に出かけようと思い立ちました。
調べていて見つけたのが2023年3月1日(水)から21日(火・祝)まで日本橋高島屋で開催されていた「ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展」。

北欧といえば、言わずもがなプロダクトデザインの聖地。前職では北欧の遊具を扱っていたこともあり、その長い冬をできるだけ豊かにポジティブに過ごせるよう、明るい配色が施された公園の遊具やごっこ遊びの道具たちは非常に洗練されていて、そうしたデザインが生まれる北欧の暮らしや思想、価値観といったものに以前から興味があったのでした。

今回の展覧会は椅子研究家の織田憲嗣氏が収集、研究してきた家具や日用品をもとに構成され、北欧のデザイナー総勢70名以上による作品が展示されているとのこと。
写真撮影OKということもあり、心に留まったものを残そうと撮り始めたらほとんど全部だったというくらい個人的に見どころばかりだったのですが、その中でもとりわけ印象的だったものをいくつかご紹介したいと思います。

椅子と生きる

「椅子と生きる」と題された特集の中でずらりと並んだ北欧を代表する名作の椅子たち。

〈ストックホルム市庁舎のための椅子〉意匠に伝統的な要素が組み込まれ、どことなく気品を感じます。
〈ピーコックチェア〉見た目は華やかでも人間工学的に座り心地も追求されているそう。
〈ザ・チェア〉経済性と機能美が両立し今もなおリデザインされ続ける「椅子の中の椅子」。

北欧では、初任給をもらった時や結婚する時、そんな人生の節目に椅子を買うということがあるそうです。北欧では冬が長く必然的に家の中で過ごす時間も長くなるため、その時間を共に過ごし、文字通り自分を支え、拠り所となってくれる椅子を非常に大切にしているのだそう。会場には「コージーコーナー」という、パーソナルチェア・テーブル・照明器具でコーディネートされた自分だけのくつろげる場所がいくつか設置されていました。
心地よい使用体験のみならず、使い手がそこでどんな時間を過ごすのかという深い洞察のもとにデザインされているのだと、普遍的で長く愛されている理由が腑に落ちたのでした。

作り手で使い手

北欧のデザインからどことなく感じるやさしさやあたたかさ、有機的な美しさ。
わたし自身そこに魅了された1人で、自宅でも少しずつ北欧を代表するブランド、『イッタラ』の食器を集めています。どんな料理にも合い、料理や食材を引き立たせてくれ、手に馴染み、使うだけで嬉しい気分になる、我が家の食卓には欠かせない存在です。
今回の展覧会でついにそのプロダクトを生み出したデザイナーの1人を知ることとなり大興奮。
イッタラの「カルティオ〈Kartio〉」や「ティーマ〈Teema〉」シリーズを手がけたフィンランド人デザイナーのカイ・フランク〈Kaj Franck〉です。

シンプルで無駄のない機能美と高い完成度、普遍的なそのデザインは「いかに美しく豊かに暮らすか」が追求されたもの。デザインの匿名性を志向したという彼の姿勢からも、使い手の感覚、感性を第一に据えていたことが伝わります。分野は違えど、デザインする上でいつも心に留めておきたい考えです。

機能的でありながら美しい北欧の日用品たちは、デザイナー自身も日々の家事をこなす「生活者」だからこそ、作り手・使い手双方の美意識が反映され、磨き上げられてきたもの。
そう思うと背筋が伸びると同時に、そんな北欧の思想が息づいたアートピースたちを少し背伸びして迎え入れてみようかな、と思うのでした。

次回はそんな憧れの北欧のガラス製品について、思ったこと・感じたことを徒然に書き綴りたいと思います。

Written by
FUMIKO TAIRA

WEB DESIGNER

前職では輸入玩具や公園の大型遊具を扱う専門商社で公園や遊び場づくりに携わる。 ひとつのプロジェクトを形にしていく中でプロダクトやサービスの価値や想いを届ける仕事に興味を持ち、WEBデザインの世界へ。好奇心旺盛で常に何かにハマっているが、特に音楽と旅と映画が好き。うどん県出身。