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2023.05.02

わたしコラム|イロトリドリの世界〜つつじいろ[躑躅色]〜

 

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色の名前について

説明するまでもなく、躑躅色はツツジの花の色を由来としています。躑躅は古来より日本では観賞用として愛でられてきた植物で、生息域も北海道から九州までと日本人にはとても馴染みのある植物です。国内の躑躅は最も古いもので、樹齢800〜1000年ほどのものもあるとか。

平安時代にはすでに「躑躅」が色名として使われていたようで、『枕草子』の中で清少納言は下襲(したがさね)という服の色について、「下襲は、冬は躑躅。桜。掻練襲(かいねりがさね)。蘇芳襲(すおうがさね)。夏は二藍。白襲。」と述べています。ちなみに下襲は当時のシャツ的な着物で、平安貴族が後ろに布を引きずっているイメージがあるかと思いますが、その布と繋がっていて、下着と上着の間に着るものなのだそうです。もちろん、引きずっているあの布はおしゃれアイテムではなく、階位などを表すもの。その色にも季節で良し悪しを言及するあたり、清少納言らしいうえ、冬のファーストチョイスに躑躅色を持ってくるあたり、彼女の色選びの感性の良さが伺えるのではないでしょうか。

ところで、「躑躅」って不思議な字だと思いませんか?私は大体、「かまきり」か「どくろ」に一瞬見えます。一瞬が過ぎても、大体は「つつじ」とは読めません。

この「躑」は「躑る」と書いて「たちもとおる」と読むそうです。意味はうろうろ歩き回る、とか、ためらう、の意。「躅」は「躅む」と書いて「ふむ(踏む)」と読み、足踏みする意味だそう。

「躑躅」と書いて「つつじ」と読むほかに「てきちょく」とも読むのだそう。「てきちょく」の意味は、「躑」「躅」の意味から、迷いながらも少しずつ進むさま、とのこと。その花の美しさに目を奪われ少しずつ進む、そんな植物ゆえに、「躑躅」の文字が当てられたあたり、ちょっとおしゃれなネーミングだな、と思うのです。

躑躅色のイメージ

古来から日本にある色の中では、濁りなくクリアで明るい色合いが特徴的。紫よりはピンクのイメージの方が近く、明るく華やかな印象が強い色です。

躑躅色から思い浮かべられるイメージとしては、鮮やか、明るい、暖かい、華やか、柔らかい、優しい、春、恋、ハレ、などでしょうか。冬が終わり、桜が春を告げた後、暖かな季節の到来を告げる花の色らしく、前向きに顔を上げたくなるような色ですね。

Written by
AKIRA KIKUCHI

DIRECTOR & DESIGNER

グラフィックデザイナーとして15年以上デザインに携わる。大手メーカーや官公庁をはじめ、カタログ、ポスター、ロゴ制作などグラフィカルなデザインを幅広く手がける。 近年はサイトデザインも手がけ、webデザインも対応。また、ディレクターとして、企画・提案から運営管理までのディレクションも担う。