今年のやりたいことリストを見ていると、ここ数年忙しくてできていなかったあれこれに今一度取り組もうとする自らの意志が見てとれます。その一つが前回の「パンを焼く」。そして今回は「文字を書く」ということについて書いてみたいと思います。
ここで触れる文字を書くとは、日記を書くとか、コラムを書くといった、手段としての「書く」というよりも、行為としての「書く」こと。「書写」や「書道」についてです。
なぜあえてペンや筆を持って書きたいのか、自分にとってどんな意味があるのか改めて考えてみることに。
例えば、硬筆。年長か低学年頃、半ば遊びの延長でもありましたが、書道教室でいかにお手本の書を再現するかということにこだわっていた時期がありました。
マスの大きさに対する余白や、はらいの角度。部首と旁(つくり)の比率などを細かく観察し、どう書けば美しいバランスになるのか。無意識に模写をしていたんだろうと思いますが、観察し、実際に手を動かし、客観視し、差異を分析する、あらゆる物事の習得に通じるトレーニングでした。
あるいは、毛筆。こちらはもっと身体的で、姿勢や呼吸がダイレクトに文字に現れます。筆は墨の量であったり、少しの力の差や筆の角度で全く違った線になり、しかも書き始めたら一発勝負。身体的・精神的な要素を一致させつつ、さらに審美を追求する、まさしく書の道です。
硬筆や書道のように日々のクリエイティブの仕事にお手本はありませんが、世の優れたクリエイティブに気付ける審美眼や観察眼は、こうした習慣でも磨いていきたいと思うのです。