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2023.02.14

クリエイティブに触れて|アートの島

クリエイティブに触れて 

ふるさと。と聞いて目に浮かぶ光景は人それぞれ異なるかと思いますが、私がそう聞いて浮かぶ光景は、岡山から高速バスに乗って瀬戸大橋を渡る時に窓の外に見える瀬戸内海の景色です。

よく晴れた日の真っ青な空と海と、遠く霞む島々の薄い青のグラデーションに、小さく浮かぶ白い船と航跡波。地元に帰ってきたなあという実感が湧く、穏やかで凪いだ瀬戸内海のお馴染みの表情です。

讃岐うどんやお遍路さんが有名な香川県ですが、ここ最近知名度を増しているのが直島や小豆島、豊島といったアートの島々。2010年から瀬戸内国際芸術祭というアートの祭典が3年毎に開かれ、瀬戸内の海や島の風景、暮らしからインスピレーションを得たアート作品や美術館が点在しています。

大人になって瀬戸内海の魅力に気づいてからは、帰省する時はなるべく芸術祭の会期をねらって初めての島を開拓するのが楽しみになりました。
そんな中でも何度も訪れるほどお気に入りの島が豊島美術館です。ここはぜひ前情報なく訪れてほしいので詳細や写真は避けますが、同じ「作品」がいっときもなく、目に見えない時間や季節や音をこんな風に形あるものにできるのかと、初めて訪れた時は衝撃を受けました。

こんな緩さも良いところ。

他にも印象的だったのは、沙弥島の「そらあみ」という作品です。カラフルに編まれた漁網が空に掲げられ、風景がまるごと一つの額縁に入ったかのようでした。「編む」という行為の奥行きと、風に揺れ、水面に反射するカラフルなフレームは、見慣れた瀬戸内海の風景を特別なものに見せてくれます。

時々思い出す冒頭のふるさとの風景。そこに紐づいているのは訪れた島の記憶や印象的なアート作品の数々ですが、同時に恋しくなるのは瀬戸内海のゆったりとした空気だったり、今ここに意識を向ける、余白の時間とでも言いましょうか。

絶賛繁忙期のカラビナですが、目の前の仕事に全力で取り組みつつ、この荒波を乗り越えたら、またお気に入りの場所に訪れて目一杯余白を楽しみたいなあと思っています。

Written by
FUMIKO TAIRA

WEB DESIGNER

前職では輸入玩具や公園の大型遊具を扱う専門商社で公園や遊び場づくりに携わる。 ひとつのプロジェクトを形にしていく中でプロダクトやサービスの価値や想いを届ける仕事に興味を持ち、WEBデザインの世界へ。好奇心旺盛で常に何かにハマっているが、特に音楽と旅と映画が好き。うどん県出身。