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2023.10.31

クリエイティブに触れて|東京 上野『国立科学博物館』地球史ナビゲーター

クリエイティブに触れて 

地球史ナビゲーターは、次世代への最高の贈り物

歴史好きが災いして、とんでもない沼にハマる

今回は、国立科学博物館に行ってきました。

お子さんがいらっしゃる方なら、行かれたことがある方も多いのではないでしょうか。今回訪れてみて、お子さんが小学生になって文字がある程度読めるなら、ぜひ連れて行ってあげてほしい場所のひとつだと思います。

とは言え、今回私は、最初の最初、地球館の「地球史ナビゲーター」を2時間以上かけて堪能してしまい、他のエリアをみることができませんでした。

地球史ナビゲーターのページ

他の記事でもちょいちょい触れていますが、私は、実は大の歴史好きです。過去の遺物や文献から、かつて起こったことを論理的に推察して積み上げた“歴史”そのものに魅力を感じていると同時に、その過去を思い描き、持てる力の全てを使って過去に起こったことを明らかにする、その道筋を描いた研究者の姿に想いを馳せるのも胸が熱くなるのです。

そんな“歴史”も“歴史を描く過程を想像すること”も好きな私にとって、「地球史ナビゲーター」は想像以上の“沼”でした。

“歴史好き”とはいうものの、基本的には有史以降の、誰が何をした、という歴史が好きなわけで、それ以前に関しては、宇宙の始まりはビッグバンであることとか、恐竜は隕石が落ちたことで絶滅したとか、人類は猿から進化したとか、超ざっくりとした一般教養的な知識しかありませんでした。◯千年前とか、◯億年前、とか言われてもピンとこないし、具体的な情報もない中で興味が湧きにくかったのもあるかと思います。

そんな私にとって、この展示は想像以上に新たな発見にあふれるものでした。


歴史を “感じ” させてくれる巨大スクリーン

ところで、宇宙や生命の成り立ちには、知らなかったことも数多くありました。

例えば、太陽系は46億年ぐらい前にできたということが定説なのだそうですが、なぜそうらしい、と言えるか、ご存じですか?

1969年2月、メキシコにアエンデ隕石という隕石雨が降ってたそうです(隕石雨とは地上に届くまでに元の隕石が砕けて雨状に降り注ぐもので、新海誠監督の映画に出てくる流星群のイメージです)。1969年と言えば、1月に当時ソ連の宇宙船ソユーズ4号と5号が宇宙空間で初のドッキングを行い、7月にはアポロ11号が世界初の有人月面着陸を果たした年。この隕石に含まれる成分が45.66億年前のものと見做され、今のところこれより古いと言える物質が発見されていないことから、太陽系が発生する際に生まれたもの=太陽系はだいたい46億年くらい前にできた、とされているのだそうです。

ほかにも、「冥王代」や「大酸化事変」など、聞いたことは微かにあったような気がすることも、改めて知ると新鮮な驚きのある知識が満載です。

国立科学博物館のアエンデ隕石のページ

スクリーンの下の展示。上は宇宙史の説明パネル。下は人類史の展示で、原人〜猿人〜現生人類の頭骨と脳の大きさ比較。

科学を愛する先達の、あふれる想いを想像してみる

今回訪れた「地球史ナビゲーター」について、製作者目線で素晴らしいと感じることが、大きく3つありました。

 ★映像に言葉を交えずに、感覚的に宇宙史・生物史・人類史を感じられること。

 ★映像を映すスクリーンの下には時間軸の対応が分かるよう説明書きや遺跡・化石などが配置されていること。

 ★音楽が絶妙なBPMと音色で、ほんのちょっとだけ楽しい気持ちになれる演出であること。

制作段階でどれほどこだわったことか、というのがこの空間の完成度の高さに表れていて、帰り際に、心の底からの敬意を置いてきたつもりです。

そして私が製作物としてのこの空間から感じたのは、作り手=博物館側の「科学・歴史が心から好き!」「次の世代にも(あわよくば親世代にも)この楽しさを知ってもらいたい!」という2つの想い。

ものを作る立場で昔から大事にしているのは、「想い」をしっかりと込めること。広告屋としては、お客さまのその商品への想いをしっかり受け取って表現すること。いわゆる魂がこもるかどうか、ということに近いと思います。

科学の面白さを博く伝えたい、そんな科学に携わる皆さんの「想い」のこもった国立科学博物館 地球感 地球史ナビゲーター、私はこれから先も、何度も訪れることになると思っています。

Written by
AKIRA KIKUCHI

DIRECTOR & DESIGNER

グラフィックデザイナーとして15年以上デザインに携わる。大手メーカーや官公庁をはじめ、カタログ、ポスター、ロゴ制作などグラフィカルなデザインを幅広く手がける。 近年はサイトデザインも手がけ、webデザインも対応。また、ディレクターとして、企画・提案から運営管理までのディレクションも担う。