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2022.08.17

わたしコラム|自分の書いた言葉への想い〜第1回〜

言葉 

キャッチコピーで何か賞をもらったわけでもない私が、自分の書いた言葉を振り返る。という、恥知らずで大胆なコンテンツ「自分の書いた言葉への想い」のページへようこそ。笑

下手でも、とても普通のことを書いていても、じつはこんなことを考え、想いを込めている。ということを一方的に伝えていきたいと思います。

第1回目は、「想いはスキルを超えるから。」です。

これは以前、求人広告の代理店に所属していたときに書いたものです。クライアントはIT系の中小企業であるO社。制作にあたり、社長に取材して創業した理由やこれまでの苦労話、社員に対する想いなどを伺いました。

そのなかで印象に残ったのは、「一番大切なのは、いま持っているスキルよりも、どんな人になりたいかという想いだね」という一言。この言葉を発したときだけ、それまでずっと冗談まじりに笑いながら話していた社長が、すこし寂しそうに見えたのです。

話を伺っていくと、会社としては社員たちが一生、生活できる力を身につけられるように、仕事や働く環境を整えようとしている。けれど、この業界は過去のスキルだけで生きていけるほど甘くはない。「成長したい」という想いを失って、食べていけなくなった人をたくさん見てきた。なかには昔、一緒に頑張った人もいた。だから、この会社にも誘った。でも、想いを失ってしまっていると、仕事がうまくいかないから、おのずと離れていってしまった…という経験が背景にあったようです。

この社長の想いを、どうにか求職者に届けたいと考え、求人メディアではキャッチコピーの役割も担う、原稿の見出しとして書いたのが「想いはスキルを超えるから。」でした。

後日、求人への応募だけでなく、思わぬところからも反響が。

所属する代理店の若手営業マンが印刷した原稿を手に持って、「すずけんさん、コレ、励まされました。たまに見てます。」と声をかけてくれたのです。

嬉しかった反面、キャッチコピーの役割を考えると、どんな会社でも誰に対しても当てはまる言葉になってしまったことを反省。「せめてO社に入社される方の励みにもなってほしい」と思ったことを、いまでも覚えています。

Written by
KENTA SUZUKI

Copywriter & Creative Director

大手SIerにて企業の課題解決を経験したのち、クリエイティブの世界へ。業界問わず難易度の高いビジネスモデルをわかりやすく伝えるコミュニケーションづくりから、チャーミングでユーモラスな企画立案まで。コピーライターとして第53回宣伝会議賞ファイナリスト、TCCコピー年鑑2019掲載。