CARABINER MVV
2019.09.19

ミッション、ビジョン、スローガン…。そもそも違いって何ですか?戸部に聞きました!〜ミッション・ビジョン・スローガンって?~

スローガン ビジョン ミッション 

コピーライター/ディレクターの岡村です。
カラビナに入社して2年。企業の採用やブランディングに携わることも初めてでした。
まだまだ勉強中の身ではありますが、さまざまな企業からミッション/ビジョン/スローガン作成のご依頼が増えて行く中で、少しずつ採用スローガンなどの開発のお手伝いもするように。
そんな中で沸々と湧いてきた疑問が、「ビジョンやミッション、スローガンの違いがよくわからない!」ということ。
そこで今回は弊社の戸部に、その違いとつくり方について聞いてみました
かなり初歩的な質問で、少々お恥ずかしいところはありますが、カラビナの考える企業と社員、そして企業と社会のコミュニケーションについてお伝えできればと考えています。
教えて!戸部さん!

ミッションとビジョンの違いって?

―企業の理念を伝えるために、ビジョンやミッション、スローガンなどを考えることは重要であることは理解できるのですが、そもそもそれぞれの役割って何でしょうか?

戸部:日本ではまだ完全に整理しきれていないっていうのはあるけど、ちょっと大きな質問ね(笑)。ところで「ミッション」ってどういう意味かな?

―えっと、使節?伝導?あ、「使命」ですかね?

戸部:そう、「使命」だよね。じゃあ、「ビジョン」の意味は?

―うーん…。方向性?目標?でしょうか。

戸部:街中にある、大画面とかよく「●●ビジョン」っていうように「見える」のがビジョン。つまりは「絵」のようなものよね。
そこから考えて、企業におけるビジョンとは、例えば10年後、その会社がどんな風になっていたいの?と可視化できることを私としては大切にしてる。
そういう言葉があれば、働く社員も「うちの会社は、やがて、こうなっていくんだ!」とか「社長が、目指す世界観は、こういうことなんだ!」って会社の実現しようとしている夢が見えやすいし、「会社が、それを目指すなら、私の仕事では、こんなことをやってみよう!」などと前向きになれる。
だから、私にとってビジョンは「見えるもの、イメージできること」になるよう工夫しているんだよね。

―なるほど。企業の目指す未来がビジョンですね。

戸部:それと、ミッション・ビジョンとセットになって開発することが多いのが、バリュー。バリューの本来の意味は「価値」だけど、こうした企業の理念体系を開発する場合では、ほぼ「行動指針」の役割として使われるんだ。
ただし、様々な企業の理念をみていると、ビジョンだけ掲げている会社もあれば、ビジョン・ミッションを逆の順番で使用している会社もある。
実は、この棲み分けは日本ではあまり明確になっていないのが実情。
中でもミッションの本来の意味は、キリスト教系の学校がミッションスクールっていうように、これは天からおりてきた使命である「天命」ということなんだよね。
キリスト教的な考えが、あまり浸透していない日本では、ミッションという言葉で、「ピン」とくる人はそれほど多くはない。
では、天命とは何かと言うと、例えば「その才能を天から授かったなら、社会のためにつかうべき重要な使命がある」とでも言うほど大きなこと。
だから、ビジョンが、作り上げたい世界観だとしたら、それにどんな社会的な価値があるのか、誰に役に立てるのか、立ちたいのか、など「社会と自社を照らし合わせたときに何をするのか」という風に考えて整理して行くことが多いかなと思う。

ミッションやビジョンをつくることは、会社の枠組みをつくること。

戸部:あと、ミッションやビジョンを策定するのは、「会社のルール」のもっと上位概念を決めることに近いんだよね。
たとえば、憲法があってその下に法律があるとしたら、法律は会社のルールや就業規則に当てはまるよね。
その上にある、憲法の「日本国とはどういう国でありたいか」というのに近いのがビジョンやミッションなどの概念。
「やっぱり平和が大事だよね」とか、「国民主権なのだ」とか、この辺りの考え方は国によって違うよね。
同じように、ミッションやビジョンも、ある意味で企業の枠組を決めるもの。だから、事業領域とも深く関わってくる。

―なるほど…。

戸部:例えば、飲料メーカーで考えてみると、ウイスキー屋さんから始まった有名飲料メーカーがあるけれど、かつてはウイスキーしか扱わなかったのが、ビールやワインなど酒全般を扱うようになり、今はソフトドリンクも健康食品も扱うようになった。要は事業ドメインが拡大されているわけよね。
ところがもし、この会社が仮に「人々に、美味しいウイスキーを届ける」と言うミッションを持っていたら、ウイスキーの外には行けないことになってしまう。だから、ミッションやビジョンは、絞れば絞るほど事業の範囲を規定してしまう危険性もはらんでいるということ。
反対に言うと、事業ドメインの拡大に合わせてミッションも、レイヤーが上がり抽象度の高いものになって行くケースも多いんだよね。

―確かに、専門性の高い企業であればミッションを絞れば絞るほど「らしさ」は出てくるかもしれないですね。

戸部:その通り!いま国内に、面白いウイスキーのベンチャー企業があるけど、そういう企業ならば、その企業でしか実現できないウイスキー体験をビジョンに落とし込んでもいいのかもしれない。
でも、常に、経営戦略面も視野に入れて「その攻め方で良いんだっけ?」という視点も持っておかないとミッションやビジョンの開発はできないなと思う。

―ミッションと、事業戦略って密接な関係なんですね。

戸部:まさにそうだよね。
その一方で、企業とは、まるで一人ひとりが異なる人間のような存在でもあるので、その企業体にふさわしいコミュニケーションの形があるんだよね。
だから、最初からミッション・ビジョン・バリューのセットでなければいけないなどと、定規のように当てはめれば良いとは、私はあまり思っていない。

個人的には、ビジョンが一番好き。

戸部:個人的には、ビジョンについて考えるのが一番好き。
まず、わかりやすいし。また、ビジョナリーな人っていうのは未来が見えている人で。
たとえば、あの有名なテーマパークの創業者が、フロリダのワニしかいない沼地の湾をみて、「ここにテーマパークをつくる!」って言い出した時は、銀行家を始め、多くの人が「この人何言ってんの?」ってなったけど、彼には未来がありありと見えていた。
そんな私も、カラビナがやろうとしている、「事業にもっとクリエイティブを使っていけば、企業はもっと活性化するはず」と未来がありありと見える。
で、そういう人は創業社長に多いんだよね。
会社とは、そういう人がいて、「さぁ、あそこに行くぞ!この未来をみんなで見ようよ!」と声を上げることから始まるから。
その一方で、組織の構成員のみんながみんな未来志向ということはないよね。
精緻な計算が得意な人もいれば、チームビルディングが得意な人もいる。
そうして、いろんな力を持つ人が集まって、「目指す星はあそこだよ」とビジョナリーな人が発信しながら組織は進んでいく。
その時、みんなが、「目指す星にたどり着いたら、どんな良いことがあるだろう」「そのために、自分はこんなことがしてみたい!」って思えるからみんなも頑張れる。
でも、これがなくて「来年も売り上げ10%アップ」とだけ言われ続けたら組織は盛り上がらないよね。
ビジョンがあることで、ワクワクできるし、それが一人ひとりの誇りになる。
そういうのが、ありありと見えるから企業はグルグルと前に向かっていけて。
だから、個人的にはビジョンが一番わかりやすくて好きなんだよね。

おわりに

Written by
SATOKO OKAMURA

DIRECTOR & COPYWRITER

大学時代はメディア表現学を専攻。フリーペーパーの広告営業、企業が発行する会報誌等の企画編集を経て、カラビナに入社。好きなものは1960~70年代のロックと映画、落語。映画好きが高じて映画館でアルバイトをしたことがある。肉全般と立ち食い蕎麦、どら焼きに目がない。