クリエイティブに触れて | 見えないところで人の心を一つにする言葉。
人気カウント422
「葡萄が、かみつく」。もう10年以上前に、こんな不思議なトーンのコピーを見せてくれたコピーライターの先輩がいました。その方は、モスバーガーを世に出したり、BESSという個性的なハウスメーカーのブランドを作ったり。単にコピーを書くのではなく、企業やサービスそのもののあり方を形づくれるクリエィティブディレクターでした。
その方が経営する事務所にほんの少しの間だけ席を置いたことのある私。そこで学んだのが、「言葉」で止まらないコピーの仕事だった気がします。
会話の中で聞いたこの「葡萄が、かみつく」。日本で最も有名と言っても過言でない酒類メーカーのワイン事業部向けの事業スローガン。依頼の背景に、安価なテーブルワインの部門で競合と差別化しにくいこと。自社農園を持つ強みを感じさせたい。そして、社員が誇りを持って働けるように・・というオーダーがあったと聞いています。
コピーライターの目線で見ると、この「葡萄が、かみつく」というのはある意味、未完成な感じがするコピーです。言い切れてない感じもするし。ただ、この不安定さが、現在進行形なイキオイとか、社員のみなさん続きをよろしく!のようなニュアンスにも受け取れる。そして、込められた意図は、「ちょっとワイルドで野生味のあるワイン、そして、働くみんなも挑戦的・冒険的にね!」ということだったと聞きます。そして、この事業部ではこの言葉を柱にしてパッケージデザインや営業戦略を落とし込んでいくのです。
リクルートにて、ずっと企業や組織、事業にまつわる広告を作ってきた、それまでの私の感覚は、コピーとは、人目につくところ・・。例えば駅とか学校内とか。雑誌や新聞、ときにT Vで使われるものという固定概念がありました。また、この業界には、目立つ大きなメディアにどーんと自分の書いたコピーが掲載されることが誉れ価値観が根底に流れている。
しかし、この仕事は事業部戦略の資料に重要な言葉として載ることはあっても、別に大型キャンペーンとして、社内の目立つ場所にドトーンと貼られるわけでもない。「でも、何かが素晴らしくて、新しい」。
それはこれが、事業部の中にいる当事者でも、経営のプロでもきっと作ることのできない種類のメッセージだと感じたからです。一言で気持ちよく、直感的に組み込まれた事業価値とそれを実現するためのマインドセット。すっと、誰の胸にも入る大きさで結晶化していくのは、まさにコピーライターとしての訓練を積んだ者だからできる仕事だと確信しました。
その一方で、日本に世界に元気が出ない会社は溢れていて。けれど、その1社1社に、そこにしかない独自の価値がきっと眠っている。それをこうした言葉やデザインの力で見えるようにできたら、きっともっと元気な企業が増えていくはず。クリエイターである私たちの強みは、多角的で自由でしなやか。いい意味でジャンプした発想ができる。その思考の力を持って、真面目なビジネスパーソンのお客様とコラボレートしたら、「人の心を強く一つにするメッセージ」が届けられるんじゃないか。と、これがカラビナという会社を作った基礎の考えになっています。
コピーやクリエィティブ。一見、経営や産業に少し遠いと思われるものとの接続について、これから少しご紹介していけたらと思います。
RELATED ARTICLE
関連記事
-
VERY GOOD CONTENTS
クリエイティブに触れて|国立科学博物館特別展示『和食展』
科学の目で身近なものを見る楽しさ ずっと思っていた東京の水への違和感。 今回は、和食展に行ってきました。最近お気に入りの国立科学博物館の特別展示です。 展示は2部構成で、前半が国立科学博物館らしい、和食を科学の目で紐解いていくもの、後半は和食に付随する農業や漁業、日本・世界の食文化の違いについてと和...#クリエイティブに触れて
人気カウント443
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|初詣はつらいよ
毎年恒例の初詣ラン、今年も敢行してまいりました!コースは例年通り、江戸川河口付近から河川敷を川上に向かってさかのぼり、柴又帝釈天までの約10km。そして、この季節は川上に向かって走ると強い向かい風に見舞われるというのも例年通りで、通常の倍近くの体力を要します。ここ数年の体力の減退とトレーニング不足が...#アクティブ
人気カウント432
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|イロトリドリの世界〜黄色〜
C0 M15 Y100 K0 /R251 G208 B29 「黄色」について 基本色名のひとつの黄色。ちなみに、基本色名はとは、色を言葉で伝え合うときに使用される色の名称で、JIS規格で決められています。白・灰色・黒・赤・黄・緑・青・紫・黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫の13種類が採用されています。 か...#色
人気カウント532
RANKING
人気記事
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|イロトリドリの世界〜アップルグリーン[APPLE GREEN]〜
C40 M0 Y55 K5 /R143 G193 B134 アップルグリーンは、その名の通り、青りんごの色。日本のりんごは赤のイメージで、青りんごの流通は多くないですが、海外では青りんごもそれなりに出回っているので、より馴染みのある色で、アップルといえば、グリーンをイメージする人も多いようです。 幼...#色
人気カウント1744
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|イロトリドリの世界〜オレンジ[Orange]〜
C0 M60 Y100 K0 / R230 G121 B40 *色の名前について 色名の由来は、もちろん果物の「オレンジ」から。日本では「橙色」という別名も。オレンジと橙色は、JIS規格的には全く一緒の色なのだそうです。「橙(ダイダイ)」が常用漢字にならなかったため、「オレンジ」と呼ばれるように。ち...#色
人気カウント1642
-
VERY GOOD CONTENTS
クリエイティブに触れて|東京 上野『国立科学博物館』地球史ナビゲーター
地球史ナビゲーターは、次世代への最高の贈り物 歴史好きが災いして、とんでもない沼にハマる 今回は、国立科学博物館に行ってきました。 お子さんがいらっしゃる方なら、行かれたことがある方も多いのではないでしょうか。今回訪れてみて、お子さんが小学生になって文字がある程度読めるなら、ぜひ連れて行ってあげてほ...#クリエイティブに触れて
人気カウント1149
人気記事
-
CARABINER MVV
企業スローガンとは?社是と何が違う?中小企業やBtoB企業での効果的な事例も紹介
ここではミッション、ビジョン、バリュー(MVV)、それぞれの意味や作成方法、その効果や浸透策についてご紹介していきます。企業はミッション、ビジョン、バリューなどの理念体系をまとめることで、自社が目指す方向が明らかになるなど、組織や経営に与えるメリットは多数あります。一方で、どの会社でも言えるような、ミッション、ビジョン、バリューになってしまうと、むしろ社員を迷わせてしまったり、企業への尊敬を薄めてしまったりするケースもあります。経営戦略とも密接に絡みながら、自社の目指すべき方向性やどのように社会に価値を返すかを定義していくミッション、ビジョン、バリュー。自社らしい価値を磨き上げることで、企業の成長に寄与する効果を生み出していきたいものです。人気カウント4833
-
CARABINER MVV
ビジョンとは?中小・BtoB企業にも必要?策定方法や導入事例もわかりやすく解説
ここではミッション、ビジョン、バリュー(MVV)、それぞれの意味や作成方法、その効果や浸透策についてご紹介していきます。企業はミッション、ビジョン、バリューなどの理念体系をまとめることで、自社が目指す方向が明らかになるなど、組織や経営に与えるメリットは多数あります。一方で、どの会社でも言えるような、ミッション、ビジョン、バリューになってしまうと、むしろ社員を迷わせてしまったり、企業への尊敬を薄めてしまったりするケースもあります。経営戦略とも密接に絡みながら、自社の目指すべき方向性やどのように社会に価値を返すかを定義していくミッション、ビジョン、バリュー。自社らしい価値を磨き上げることで、企業の成長に寄与する効果を生み出していきたいものです。人気カウント2409
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|イロトリドリの世界〜アップルグリーン[APPLE GREEN]〜
C40 M0 Y55 K5 /R143 G193 B134 アップルグリーンは、その名の通り、青りんごの色。日本のりんごは赤のイメージで、青りんごの流通は多くないですが、海外では青りんごもそれなりに出回っているので、より馴染みのある色で、アップルといえば、グリーンをイメージする人も多いようです。 幼...#色
人気カウント1744
-
CARABINER MVV
ミッション、ビジョン、スローガン、それぞれの違いとは? | カラビナ
企業の採用やブランディングにおいて重要なミッション/ビジョン/スローガンについての詳しい解説です。会社の根幹を担う考え方を正しく理解する事は、業績や社員のモチベーション向上につながります。#ミッション#ビジョン#スローガン#違い#ミッション/ビジョン/スローガン
人気カウント1729
-
VERY GOOD CONTENTS
わたしコラム|イロトリドリの世界〜オレンジ[Orange]〜
C0 M60 Y100 K0 / R230 G121 B40 *色の名前について 色名の由来は、もちろん果物の「オレンジ」から。日本では「橙色」という別名も。オレンジと橙色は、JIS規格的には全く一緒の色なのだそうです。「橙(ダイダイ)」が常用漢字にならなかったため、「オレンジ」と呼ばれるように。ち...#色
人気カウント1642


