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2022.08.24

クリエイティブに触れて|夏のフィルムに思いを馳せる

Written bySATOKO OKAMURA

DIRECTOR & COPYWRITER

大学時代はメディア表現学を専攻。フリーペーパーの広告営業、企業が発行する会報誌等の企画編集を経て、カラビナに入社。好きなものは1960~70年代のロックと映画、落語。映画好きが高じて映画館でアルバイトをしたことがある。肉全般と立ち食い蕎麦、どら焼きに目がない。

大学時代はメディア表現学を専攻。フリーペーパーの広告営業、企業が発行する会報誌等の企画編集を経て、カラビナに入社。好きなものは1960~70年代のロックと映画、落語。映画好きが高じて映画館でアルバイトをしたことがある。肉全般と立ち食い蕎麦、どら焼きに目がない。

クリエイティブに触れて

クリエイティブに触れて|夏のフィルムに思いを馳せる

人気カウント67

池袋の新文芸座で観た、西城秀樹のライブ映画『ブロウアップ ヒデキ』のことを、映画を観てから1年以上経った今でも時折思い出します。

西城秀樹といえば、言わずと知れたスーパースター。マイクスタンドを振り回すパフォーマンスを日本で初めて持ち込んだのも、ペンライトの発祥も西城秀樹。調べてみると、「これもそうなの⁉」と驚くような偉業の数々…。

私にとっての西城秀樹は、母が大好きなヒデキです。少し話が逸れますが、私は、私が生まれる前の母の話を聞くのが好きです。青森の実家を出て、保育士として働きながら過ごした東京のこと。銀座で生地の薄いカリカリのピザを食べて感激したり、仲の良い同期と仕事帰りに品川のアンナミラーズで何時間もお喋りをしたり。そして、当時ヒデキの担当だった美容師さんに髪を切ってもらったことや、嵐のなかの後楽園球場のライブがかっこよかった話は何度も聞きました。そんな母の青春時代に思いを馳せると、不思議と心が温かくなる気がします。私にとっても、ヒデキは何だか特別なのです。

映画は、1975年7月20日から8月24日まで、全国15か所31公演行った「西城秀樹・全国縦断サマーフェスティバル」を記録したもの。ライブパフォーマンス以外にも、ステージを組み立てるスタッフの日焼けした背中や、ショーで訪れた札幌や広島などの街の風景やファンの様子など様々な視点のカットから構成されていました。ライブというより、1975年の日本の夏を見ているような感覚。街にスターがやって来た胸騒ぎがリアルに感じられました。印象的だったのは、やはり富士山麓の野外ライブ。会場に向かうツアーバスで、女の子たちが「恋の暴走」を歌うシーンは、映画を観た時期が緊急事態宣言下だったのもあり、失ったものを見ているようで感動と切なさが入り混じった気持ちに。また、この日のライブで、ローリング・ストーンズの「悲しみのアンジー」のカバーを歌う姿はまるでひとりウッドストックのようでした。

ヒデキはこのツアー以外でも、洋楽のカバーを歌っています。また、後にインタビュー記事を読み、『ブロウアップ ヒデキ』はウッドストックの記録映画に影響を受けていたことも知りました。私が感じているヒデキの魅力は自分の大好きな音楽を届けることや、皆を楽しませることに夢中であるところです。ライブのMCで「この会場にいる人は皆友達」とファンに話しているのを見ていると照れてしまいますが、このまっすぐさが先駆的なライブパフォーマンスを生み出してきたと思うのです。

ヒデキのライブで近くの席の人が振り付けを知らない時は周りの人が教えてあげるんだよ、と母から聞いたことがあります。「皆で楽しもう!」と夢中で表現する人に、ファンも夢中で応える。そんなアーティストとファンのやり取りは、歌や演奏と同じくらい、心を打つものがあります。今はもうヒデキはこの世にいないし、母が青春時代を過ごした品川のアンミラ(一度家族で行きました)も、この8月で閉店する。でも、映画のことも品川のアンミラのことも、これからもどこかで思い出すでしょう。

“推し”という言葉は至るところに溢れているし、推しの舞台を観にガンガン遠征に行く友人がいます。現場に行けば行くほど垢抜けていく。推し活の威力を目の当たりにしています。そんな友人が羨ましくもあります。何かに夢中な瞬間は、特別だから。夏の日差しのようにまぶしいのです。


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