自走しない組織でも、パーパスは浸透するのか?
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経験値から申し上げると、自走しない組織でもパーパスは浸透します。ただし、「言葉を作って広報する」だけでは難しい。鍵は、社員が”自分ごと化”できる継続的な接点を、組織側がどう設計するかにあります。ここでは、パーパス浸透の壁となるものやその改善策まで解説させていただきます。
パーパス浸透には、どんな壁があるのか?
まず浸透の壁になるのが、企業ごとの組織文化や組織観です。「組織観」という言葉に馴染みのなさを感じる方も多いかもしれません。これは、個人が持っている「組織とは、このようなものだ」という、一種の観念と考えればいいでしょう。実は以前、MBAで組織論を学んでいた時に、教授が学生に質問を投げかけたことがあります。それは、自分の育ってきた組織観はどのようなものかという問いでした。その時あげられたのは、「官僚的」「効率重視」「成果主義」「創造的」など合計で7つほどバリエーションがありましたが、「創造的」に挙手したのは筆者と教授自身のみ。
残り30人近い学生の多くが、官僚的、効率重視などに票を入れていました。当時は、2020年。また、学生の多くが上場企業のマネージャークラスという状況でした。それでも、多くの方が、自組織は官僚的だ、成果主義だ、あまり創造的ではないと考えていたということです。
一方で、パーパス開発を依頼される企業の多くが、まさに自組織を「官僚的だ」「セクショナリズムが横行して、全体観がない」「指示待ち社員が多い」と口にされます。こうした組織は、これまで自分で考え、自発的に行動する習慣を身につけてこなかった方が大半ですから、社員一人ひとりに自律的に考え行動することを期待するパーパス経営のスタンスはなかなか馴染みにくいのです。そのため、パーパスを開発しても、一足飛びに、社員が自走する組織にはならない。まさにジレンマです。
官僚的な文化を、パーパスで変えたいジレンマ。
では、どうすると、この壁を乗り越えてパーパス浸透が叶うのでしょうか。策は、いろいろあります。まずは、社内外への広報は必須です。パーパスをポスターや動画にして広めたり、社員向けにキックオフを行う。企業サイトを改善するなど、さまざまな広報策を打っていきます。ただ、それだけで浸透するわけではないことも認識しておいてください。では、どのような取り組みが良いのか?ここからは変化が起きた企業様のケースをご紹介しながら、話を進めていきたいと思います。
事例①|3年の伴走で「調査会社」から「パーパスを意図する企業」へ自己定義が変化
まず一社目は、ここ3年に及んでお手伝いさせていただいている企業様。リサーチに関する事業を行われており、ちょうど、AIの台頭を受けて自社の事業価値を見つめ直す時期に入っています。
この企業様は、こうした未来を予見し、3年前にパーパスを策定しておいたのです。ですが、その翌年にも、パーパスを噛み砕いたバリューを構築するなど、1年おきにパーパス開発に連なるワークショップを重ねていたため、社員の意識にも変化は起きていました。以前は、自社について「調査会社」と認識していましたが、パーパスを「人々の生き方や幸せに資する企業(パーパスの意図)」と定義したため、より広義に自社を捉えられるようになっています。それが、市場変化を受け入れやすい土壌にも繋がり、「手段としての“調査”に縛られず、いろいろなことをやっていい」という意識が広がったそうです。言葉の解像度が変わると、社員から見える景色が変わる好例です。
さらに、一部では研究機関に入り込むような新サービスが生まれたり、私どもが主催したワークショップをヒントに、自社内でもワークショップを行うなど、自走型で風土改革を行う動きも高まっています。
事例②|全社員を巻き込む浸透設計で、部門を越えた会話が動き出した。
もう一つの企業様は、サポート2年目になる流通系の企業様。この企業様も、じっくりと半年以上の時間をかけて、自社を理解し、対応する市場の特徴を掴むなどのワークを積み重ねて、パーパスを開発。さらに、複数あるパーパスの文言を選定する際には、主要メンバーだけでなく全社員を巻き込んだ、 “パーパスの言葉を選定するイベント“を開催しました。さらに、このイベントの中にも、自社理解や市場理解を含むミニワークが仕込まれており、パーパスへの理解度が上がる仕組みを工夫しました。さらに、その数ヶ月後には、パーパスを各事業紹介に落とし込むためのワークショップや自社紹介ツール作りを開催するなど、主要メンバー以外にもパーパスに触れる人数を増やし、浸透のための努力を重ねてきました。
その結果として、こちらの企業でも、パーパス開発に参加したメンバーがキックオフで独自のイベントを企画したり、部門間のクロスセルが少しずつ実現したりと、変化の兆しが見えてきました。
常に関わり続け制度運用やマネージャー研修まで行い文化づくりをサポート
なぜ、この企業様で「変化の兆し」が生まれたのか。社員の中から自走するメンバーが生まれてきた要因の一つとして考えられるのが、私たちのようなパーパス専門チームのサポートです。パーパスに即した制作物や定期的な広報物を作るといった関わりだけでなく、実際に、パーパスの浸透状況や経営者の肌感覚をヒアリングし、その組織に即した対応策を実行しているのです。経営のステップが上がる段階で、戦略とパーパスの紐付けを理解してもらうためのキックオフを開催したり、部門ごとにミニワークショップを開催する。具体的なアクションに結びつけるための評価制度の運用のアドバイスを行ったり、マネージャー層を対象にして、メンバーとのコミュニケーション研修を主催したこともありました。
パーパスに即した制作物を展開するのは、パーパス浸透の一丁目一番地。それだけでは、組織間の融合や意見の対流は起こりません。組織がはらむ空気の変化にきめ細かく目を配りながら、社員の方と対話を続ける。この繰り返しで変化が起き、確かな地殻変動に続いていくのだと思います。もしも、読者の方がパーパス開発をお考えなら、その後の組織づくりにも専門性を発揮できるパートナーを選ぶことも大切なのではないでしょうか。
自走しない組織でも、パーパスは浸透する。ただし、それは「パーパスを作って終わり」ではなく、社員が触れ続ける機会を、組織と外部パートナーが共同で設計し続けた結果として現れる。それが、私たちカラビナが現場で確かめてきた、パーパス浸透のリアルです。
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