組織調査から浮かび上がってきた課題を解決するパーパスワークショップ 株式会社社会情報サービス様 | カラビナ
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「もっと創造的な集団になる。」そんな社長の思いに一歩近づけた、パーパス策定プロジェクト。
医薬品に関する市場調査を行う株式会社社会情報サービス(以下SSRI)は、1982年に創業。リサーチ業界の草分け的な存在でもあり、製薬会社を中心に安定した取引基盤を持つ優良企業です。しかし、その安定感ゆえに、社員の中に「経営への参加意識」や「新しいことに挑戦する」意欲が少しずつ薄まってもいたのです。企業の成長途上にある「安定期」にどんな刺激を与えて、組織を望ましい方向へ導いていくのか。この取り組みは、社長をはじめとする経営層と次世代メンバーとで織りなす気づきの旅でもありました。
きっかけは、「リモートワークが増えて、社内の一体感が薄まった」こと。
コロナ禍をきっかけに取り入れ始めたリモートワーク。これまでにないワークスタイルに多くの企業から戸惑いの声が上がりました。それは、ここSSRI社でも同様でした。「なんとなく、社員間のコミュニケーションが乏しくなっていないか?」「個人個人がバラバラに仕事をしているような感覚がある・・」。そんな声を受けて始めに行ったのは、複数の社員に丁寧なインタビューを行い現状分析する組織調査でした。
これにより浮き彫りになったのが、リサーチという知的職業への満足度は高いものの、企業への帰属意識はやや薄い。専門性が高い分、チームとしての一体感を得にくく個人事業主化しているなどの点でした。
医療という専門領域で、しかも、リサーチという高度な頭脳労働を行う業務特性のため、社員の多くが高学歴で、物静か。高い能力を持つものの外への発信性が高くないため思ったようにコラボレーションが起きにくくもどかしさもあるようです。調査の数年前に、オフィス空間をリニューアルし、フリーアドレスで音楽が流れフリードリンクという「自由」を感じる環境にしたものの、コロナ禍もあって、期待した闊達な交流は生まれていなかったのです。「今の状態でも悪くはない!でも、一つ企業としてジャンプするための風土づくりをしたい。」そうしたご要望を受け、いくつかの組織活性施策を提案。そこで選ばれたのがパーパス策定プロジェクトでした。
背景には社員からの「売上などの量的目標はあるけれど、会社がどこに向かおうとしているのかが見えない」という生声もありました。社長の心の中に「目指すところ」はあるものの、上位下達にならず、これから経営を担う現場リーダーなどを中心に「パーパス=SSRIが創りたい未来」を考えてみようと決断いただいたのです。
外からの言葉で“自分たちの強み”が見えてきた。
パーパス策定のためのワークショップのプログラムは半年以上をかけて全7回。そのフェーズを大きく分けると、「自社分析」「外から見た自社」「未来・社会へ何をしていきたいか」の3つでした。その中で、特に印象に残ったシーンについて事務局の皆さんに伺いました。
日下 友之:外から見た自社を理解するために行った、ステークホルダー・インタビューが非常に有意義でした。お客様から「SSRIさんは、社員同士が仲良く、雰囲気が良いから、安心して色々なことを相談できる」と伺った時には、自分も良いと思っていた自社の魅力がしっかりお客様にも伝わっていたんだな、と自信になりました。同時に、厳しい言葉もいただくこともありました。これに関しても、実は薄々、感じていたことだったので納得度も高く、真摯に受け止めることができたと思います。
牧田 知也:このプロジェクトがスタートする前は、「会社が個人商店的になっていて、同じ会社にいるのに、あまり話すことがない・・。それぞれがそれぞれの仕事のやり方をしていて、もう少し組織としてのまとまりを感じにくかったのです。しかし、1年に及ぶワークショップを体験して感じたのは、意外とみんな会社のことを考えていたんだな、という気づきでした。ワークショップの中での問いかけなどがあると、市場や社会との関わりについて日頃から考えていたことをぶつけてくれたり。事業に対しても自分なりの視点を持っていることを知りました。社員の中に隠れていた会社への思いが、表出することになって自分にとっても、組織にとっても良い場だったと思います。
日下:確かに、顧客や社会の目線に立つ、というワークでは、私たちのリサーチをもとに作られた医薬品を使用する患者さんやその家族になってみたのですが、一見、仕事に直結しないようでいて、実は重要な気づきが多くありましたね。直接、接することのない“顧客の顧客”の心情や悩み事を考えるワークは、これからの事業やサービス開発のヒントにもなると思っています。
会社主語で考える機会を設けることで見えてきた、参加者と会社の関係性。
梶原 康晴:ワークショップを通して変化したなと思うのは、以前は社内にいても雑談程度しか会話が無かったのですが、今は全員が同じ方を向いて業務に当たれている気がします。それと、自分自身の業務を見直す良い機会にもなったと思います。 野崎 祐孝:会社の強み、業界の動き、会社として何を社会に提供していくか、といったテーマでディスカッションする場がこれまでほとんど無かったのでワークショップ時に談義できるか、当初は心配でした。でも、蓋を開けてみると、全員が何を考えているのかを共有でき、しっかりと事業に紐づいたアイデアも出て、パーパスまで見出すことができました。結果的に、一人ひとりの中に会社のアイデンティティが息づいていたことが再確認できました。また、各々が自分なりに意見を発信してくれる、ということに気づけたのも大きな収穫です。こういった場を少しでも多く用意して、今回参加できなかったメンバーの方にも波及させていきたいですね。
土蔵 嘉菜:ワークショップを1年間運営したことで、周りの社員から、「会社で何かが起きている!」といういい意味での興味関心を惹くことができたのが大きかったと思います。事務局の活動を社内に発表する場があるのですが、その内容に対して新入社員から参加したいという言葉をいただくことができ、新しい社会情報サービスのイメージを伝えることにも成功していると思います。
パーパス策定は通過点の一つ。次は全社員への浸透と、実現に向けた実践へ。
多くの社員の方の協力の上で出来上がったパーパスは、『+Human Intelligence. 「生きる」のこれからを、人を想う力で創る。」。これまで“、製薬企業へのリサーチ“という形で自らを規定した社員の多くが、”Intelligence=知性・情報を活用して、これからの社会を生きる人に寄与していくのだ“と、視界を広げ新たな気持ちで業務に向き合っています。プロジェクトを率いた日下さんは、その後の変化をこう語ります。
日下 友之:パーパス策定後の今、少しずつ効果が現れてきていると思います。まだまだ部門や人によって差はあるものの、あるチームでは「世界的に、こういった動きが出てきている。だから、会社の未来のことを考えるとこうすべきだよね」といった前向きな会話が繰り広げられるようになりました。会社の大きなベクトルが見えたからこそ、自信を持って自分たちの意見が出せるディカッションができるようになってきたのだと思います。
パーパスの策定は、“あるべきSSRIの姿”への最初の一歩。みんなで大きな一つの未来の夢が見えたからこそ、一つの組織として、自分らしさを発揮し輝くことができるのです。「ありたい姿」への階段を、意識的に登り始めたSSRI。これからも、その進化に目が離せません。
インタビュー
株式会社社会情報サービス|日下 友之様、牧田 知也様、野崎 祐孝様、梶原 康晴様、土蔵 嘉菜様
株式会社社会情報サービス
マーケットリサーチの重要性に着目し、1982年に創業。1988年から当時、まだ市場に存在していなかった医療におけるマーケティングリサーチという市場において、医師や医療の現場への調査に取り組む。以来30年以上にわたって、医療分野における調査会社のパオニアとして、市場拡大・市場創出を行い、業績を伸ばし続けている企業です。
編集後記
組織調査の段階から「プロ意識」「誠実さ」を高い水準で社員一人ひとりが持ち合わせている企業だと思いました。また、社長様とのお打ち合わせを通じて、さらに感じたのは「社員が高いパフォーマンスを発揮できるように、自由な環境を提供して、気持ち良く働いてもらいたい」という社長様の人を想う心が強く反映された職場ということ。リモートワークだけでなく、フリードリンク、フリーアドレス、設備整備など、私も羨ましく感じるほど働きやすい職場です。しかし、その自由さが時によって意図とは異なる影響を与えることもある。その組織運営の困難さに向き合えた、経験したくても経験することのできない、非常に貴重なプロジェクトだったと思います。自社の組織について調べてもらい、自分たちでもわからない未来について、自分たちで考え、言葉にする。それを他社にお願いするのは、企業によっては高いハードルのはず。その相談を持ち寄ってくださり、忙しい業務の合間を縫って参加・運営してくださった事務局・メンバーの方々なくしては成り立たないプロジェクトでした。パーパス策定を起点に、これからも様々な活動に携わらせていただきたいと思う所存でございます。
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