ビジョンとは?中小・BtoB企業にも必要?策定方法や導入事例もわかりやすく解説
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ビジョンは、「マネジメント」の始祖ともいわれるピーター・F・ドラッガーが提唱した、「ミッション・ビジョン・バリュー」のうちの一つで、直訳すると「展望」となります。しかし、ビジョンとミッションは何が違うのか、なぜどれか一つではいけないのかなど、あまり正しく理解されないまま使われている現状があります。本記事では、多くの中小企業・BtoB企業のビジョン・ミッション・バリューやスローガンの開発をお手伝いしてきたカラビナが、「そもそもビジョンってなに?」という根本的な疑問から、実際にビジョンを開発する方法論まで具体的にご説明します。
この記事で学べること
混同しやすいビジョン・ミッション・バリューそれぞれの定義や、違いについて理解することができます。また、それらを設定することで企業にどのような影響があるのか?社員や、社外のステークホルダーに対してもたらされる効果は何かを知ることができます。さらに実際の策定方法を知ることで、自社でもビジョン・ミッション・バリューを導入する際のイメージをつけることができます。
著者紹介
戸部 二実
株式会社カラビナ代表取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター/組織コンサルタント
大学で心理学を専攻のち、91年 株式会社リクルート入社。ベンチャーから大手企業までの企業広告、ブランディングに関わる。2000年、クリエイティブディレクター/コピーライターとして独立。2012年に株式会社カラビナ設立。
東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞/産業広告賞金賞など受賞歴多数。
2020年中央大学経営戦略科にて組織論を研究。経営学修士。
現象学とブランディングの観点から組織や経営を改善する研究を継続中。
目次
- ビジョンは「ミッション・ビジョン・バリュー」のうちのひとつ
- ビジョンとミッションの違い
- ビジョンとバリューの違い
- ミッションとバリューの違い
- ビジョンの例とは?有名な企業のビジョン・ミッション・バリュー
- ビジョン・ミッション・バリューを導入する意義・メリットとは
- ビジョン・ミッション・バリューの策定方法・進め方
- ビジョン・ミッション・バリューの導入事例(中小企業)
- 企業のスタンスが上手く伝わるスローガンを策定し、採用に成功した電気設備工事業A社様
- ビジョン・ミッション・バリューの導入事例(ベンチャー企業)
- 事業価値を再定義し、ミッションスローガンを言語化。新卒採用市場で成功を納めたS社様
- ビジョン策定についてよくある疑問Q&A
ビジョンは「ミッション・ビジョン・バリュー」のうちのひとつ
「ミッション・ビジョン・バリュー」は、「マネジメント」の始祖ともいわれるピーター・F・ドラッガーが提唱しました。ドラッガーはその著書の中で、企業には「存在意義」が欠かせないこと、すなわちミッション・ビジョン・バリューを持つことの大切さを説いています。これを宣言することで、企業の思いが伝わり、ファンや支援者、共鳴者が増えていきます。また社員へのインナーブランディングの効果もあります。
では「ミッション・ビジョン・バリュー」は、なぜ3つに分かれているのでしょうか。それぞれの違いが理解できるよう、定義についてご説明します。
ビジョン=未来。「企業が目指す世界観」
Visionの語源はView、直訳すると「展望」です。自分たち企業が存在することで、将来的に実現したい社会像・会社像について言語化したものを指します。
もっと簡単に言うと、「10年後、その企業がどんな風になっていたいのか?」を示したものと言えます。しっかりとビジョンを宣言することで、消費者は企業に安心感や好感を持ちますし、社員は将来像がイメージでき、前向きに仕事に向き合えることでしょう。このようにビジョンは、「未来志向」で考えることが肝要です。
また、ビジョンは自分たちの未来についてのみ述べるのではなく、「どんな社会にしていきたいのか?」という社会像も含んでいます。その企業が存在することで結果的に社会がより良くなる、と約束することこそが「ビジョン」なのです。
「ビジョン」によって、社員が「こんな未来が描けるんだ!」というワクワクや、期待感を醸成できることが大切です。目に見えてイメージできることが望ましいため、例えば「絵(ビジュアル)」や「映像」などでビジョンを表現する企業も多くなっています。
ミッション=今。「企業が果たすべき使命」
Missionの語源はキリスト教由来のもので、直訳すると「天啓」「使命」です。
簡単に言うと「具体的にやること」です。未来のビジョンを実現するため、私たち(社員)が「今」やるべきことはこれです、と宣言する内容が「ミッション」です。ビジョンのみだと、どうしても「絵に描いた餅」のようになってしまいますが、ミッションによってそれを具体的な行動に落とし込むのです。 「ミッション」は、社員にとって「このように判断・行動すればいい」という明確な指針になっている必要があります。そのため「ミッションステートメント(企業の行動指針)」という形で、宣言文のように表現されることが多くなっています。
ビジョン・ミッションは、形式にこだわる必要はない
ビジョンを「世界観の提示」、ミッションを「使命の宣言」と整理し具体化することで、企業が向かうべき方向がより鮮明になります。ただし、必ずしも「ビジョンとミッションの両方がないとダメ」など、あまり形式にこだわる必要はありません。どちらかのみをハッキリと提示することで、企業の存在意義や行動指針を表現できている企業もあります。ミッションやビジョンの策定は、「会社のルール」のさらに上位概念を決めることと言えます。様々な法律の上に憲法がある、と同じようなものと考えてください。社会の中で経営者の持つ志や、これまで企業が大事にしてきた価値観を、強く内外に伝えられているかが最も重要です。
バリュー=その企業らしさ。「価値観、美意識、スタンス」
Valueの語源は、力があると言う意味のvalare、直訳すると「価値」です。何に価値を置くか、簡単に言うとその企業「らしさ」だと捉えてください。
ビジョンやミッションを「どんなふうに」実現するか。それは企業によって千差万別です。バリューは漠然としていて捉えにくい単語ですが、ここにその企業「らしさ」が現れると言っても過言ではありません。企業には、人間と同じように個性があります。創業から長い歴史をかけて培ってきた「価値観」、それこそがバリューなのです。
そのため、バリューは例えば「誠実に」「常に想像的に」など、「どんなふうに」を示すワードであることが多くなっています。これを社内外に宣言することで、同じような価値観を持った人間が集まりやすく、個性を作りやすくなります。バリューが組織文化を作り、結果的にその企業が強くなっていくのです。自分たちが「当たり前」と思っていることでも、言語化して社内外に伝えることで、良い相乗効果が生まれるでしょう。
ではここまでの定義を元に、それぞれの違いを端的にまとめてみましょう。
ビジョンとミッションの違い
ビジョンは「未来の世界観の提示」、ミッションは「今の使命の宣言」です。
ビジョンとバリューの違い
ビジョンは「目指したい世界観」、バリューは「どんなふうに目指すか?の価値観」です。
ミッションとバリューの違い
ミッションは「使命、具体的にやること」、バリューは「どんなふうにやるか?の価値観」です。
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ビジョンの例とは?有名な企業のビジョン・ミッション・バリュー
ビジョンに対する理解が深まったところで、有名企業のビジョン・ミッション・バリューを見てみましょう。
TOYOTA
■ビジョン
可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える
■ミッション
わたしたちは、幸せを量産する
■バリュー
トヨタウェイ
-ソフトとハードを融合し、パートナーとともにトヨタウェイという唯一無二の価値を生み出す。
ビジョンには、「可動性」=可動の量と質を上げ、人だけでなく企業や自治体など大きな規模の集団が「できること」を増やす、とあります。車という方法論に限らず「可動」によって、人と地球の共生を実現しながら、より良い未来を作っていくことを宣言しています。ミッションは、人の幸せについて「考え」、それを「量産する」という、具体的な行動を促す内容になっています。また、バリューの「トヨタウェイ」には、人(社員)と装置とパートナーを大切に、というトヨタ独自の価値観・カルチャーについて書かれています。
詳しく読みたい方はこちら
トヨタ「トヨタフィロソフィー」
リクルート
■ビジョン
Follow Your Heart
■ミッション
まだ、ここにない、出会い。
より速く、シンプルに、もっと近くに。
■バリュー
新しい価値の創造/Wow the World
個の尊重/Bet on Passion
社会への貢献/Prioritize Social Value
ビジョンは、「あなたはあなたの心に従え」という意味の言葉になっています。人生のキーとなるタイミングに多くの選択肢があることで、一人ひとりがより自分らしく生きられる未来を生み出せると宣言しています。ミッションは、速くシンプルに身近にそれらの選択肢を「提供する」という行動について述べています。バリューは、「変わり続けることを楽しもう」「個の情熱に投資する」「社会の不を解消したい」など、リクルートらしさ・スピリットの言語化とも言える内容となっています。
詳しく読みたい方はこちら
リクルートホールディングス「ビジョン・ミッション・バリューズ」
ビジョン・ミッション・バリューを導入する意義・メリットとは
「ビジョン」は、ビジョン・ミッション・バリューという3つのうちのひとつであり、企業の存在意義を内外に示すものである、ということをご理解頂けたと思います。では、「ビジョン」を始めとしてミッション・バリューを設定・あるいは見直しをすることで、どのような効果があるのでしょうか?
メリット1(社内向け)社員の企業に対する理解が深まり、生産性や定着率が向上する
ビジョン・ミッション・バリューの作成や見直しは、企業の方向性を社員に明確に示す効果があり、社員のエンゲージメント(従業員の熱意、積極的な関与)向上につながります。「ビジョナリー」という言葉がありますが、実は企業の中でも、未来を見て仕事ができる人材はそう多くありません。しかし、経営者は往々にしてビジョナリーピープルであることが多いのです。そこで経営発信で、会社の未来について、またそこへ向かうために今すべきことを宣言することによって、「この会社に賭けてみよう」「自分もここで力を発揮したい」という機運が社内に醸成されます。
また、「ミッション」の形で行動指針が言語化されることにより、従業員が業務において判断に迷うシーンがあっても、自律的に決断・行動ができるようになります。同じゴールを見つめることによって、「その仕事を通して何を達成するのか」の迷いがなくなり、生産性が向上することでしょう。
メリット2(社外向け)採用の成功率が上がる、就職先として人気が出る
社会人に「転職したい企業」を聞くと、経営理念や経営方針に共感する企業が上位にランクインする傾向があります。どんな事業を行なっているのか、その事業は社会の役に立つのか、等が世の中に伝わることで、「入社したい」と考える人も多くなります。
また、ビジョン・ミッション・バリューへの理解が深い社員が採用活動にあたると、その企業の魅力が応募者に伝わりやすくなります。会社に愛着を持った社員は、外から見ても眩しく映ることでしょう。バリュー(価値観)、カルチャーが社員を通して伝わることで、その企業にフィットした人材を採用しやすくなります。
メリット3(社外向け)その企業に対する社会的な信用が上がり、企業の更なる成長につながる
ビジョン・ミッション・バリューを作成することによる、最も高いメリットがこれではないでしょうか。社会の中で経営者が持っている高い志、社会をより良くしていく覚悟が、これらの宣言によって世の中へと伝わります。それにより、単なる儲け主義・売上だけを目指している企業ではない、社会的責任を担った企業であるという評価を得ることができます。
企業がしっかりとした方針を持っていると認識されると、取引先の経営者や金融機関、ベンチャーキャピタルなどから注目され、支援を受けやすくなります。また、自社の目指す方向に共感する企業からの提携のオファーや、メディアからの取材依頼も増えていきます。結果的に、企業の成長が加速しやすくなります。
メリット4(社外向け)個人投資家からの理解が得られ、株価に良い影響が出る
企業が自社のビジョンやミッションを明確にすることは、取引先だけではなく個人投資家から共感を得られるというメリットもあります。すでに上場している企業や、IPOを目指す企業にとっても大変重要な戦略です。特にBtoBのベンチャー企業などは、あまり知られていない商材を扱っているため、自社の成長性や将来性をアピールするのが難しい場合があります。そこで企業の考え方、ビジョン・ミッション・バリューをしっかりと伝えることで、「革新的な企業である」「視野が広く、賢明な経営をしている」「環境意識が高い」などのイメージを持ってもらうことができます。未来への期待感が醸成できれば、資金調達につながることでしょう。
加えてサステナビリティやSDGsへの取り組みについても、自社のサイトなどで明示することで、より信頼感や安心感を与える企業イメージを築くことができます。
ビジョン・ミッション・バリューの策定方法・進め方
では、ビジョン・ミッション・バリューは具体的にどうやって作るのでしょうか。完成品がモノというより「言葉」であるだけに、作り方のイメージが湧きにくいものだと思います。ここではカラビナが、コンサルティングを通してお手伝いをした中での一般的な流れをご紹介します。
1. 自社現状分析
まず、自社がどのような状況に置かれているかを私たちと共に分析してみましょう。ここでは3CやSWOT分析、各種のワークショップなどを通して、定量&定性的に分析し、自社を客観視します。とはいえ、ビジョンなどの策定は事業戦略の策定とは異なります。もっとも大切なのは、経営者の「意志、想い」です。数字では表せない、自社の中に眠った「志」にこそ私たちは光を当てていきます。
カラビナでは、様々なワークを通してミッション・ビジョン・バリューの原型を探っていきます。
1)経営陣向けワーク
キーマンインタビュー
自社や担当事業の未来、あるべき姿などについてインタビュー
キーマンワーク
・上記の基礎情報を元にしながら、ありたい姿や自社が関わるフィールドでの未来の「機会」と「危機」の整理
・経営陣それぞれのWillや野心のヒアリング
・それらを統合した「未来イメージ」の言語化
などを通して、ビジョンの具体化を行なっています。
2)若手や中堅のキーマンを巻き込むビジョンワーク
「自社を知る」
自社の「いいね」「もったいないね」などの価値観を用いて、社員が感じる自社の可能性と課題を棚卸しする。
ステークホルダーインタビュー
顧客や同業、パートナー、自社のキーマン(社長などの経営陣)へのインタビューを通して自社の強みや弱み、社外からの期待などを把握する。
未来ワーク
多角的に自社の未来の「機会」と「危機」をイメージングし、自社がどのように進むべきかを想像していく。
ありたい姿の見える化
自社ならではの強みや特徴を意識しながら、来る未来に向けて自社のありたい姿やスタンス、自社ならば実現できるであろう世界観を描き出す。
ありたい姿の言語化
これまでのワークの集大成として、ビジョンとなるキーワードや世界観を整理し、クリエィティブな観点から言語化。多くのケースで補完するビジュアルなども併せて開発し、参加していない社員にも“理解できるように”整えていく。
2. ビジョン・ミッション・バリューの言語化
言語化する際に必要なのが、クリエイティブの力です。なぜ、「経営者の想い」そのままではいけないのでしょうか?それは例えば、「座右の銘」を例に考えてみるとよくわかると思います。
自分が大切にしている言葉が、なんとなく「普通」だったり、言葉として魅力的でない場合、他人に伝えたくはならないものです。企業のビジョン・ミッション・バリューは、他人に言いたくなる「座右の銘」のようなもの。社員がついつい唱えたくなる、社外の人が聞いたら憧れる、そんな言葉になっている方が、求心力があるはずです。
その時に大切なのは、「経営やビジネスへの理解力」と、「人の心を動かす言葉を作るクリエイティブ」の両方です。この両輪を駆使して、ビジョン・ミッション・バリューの言語化を行います。
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ミッション、ビジョン、バリューとは?意味や違い、作り方を解説! | カラビナ
3. 社内への浸透施策についてアクション設計(タスク・スケジュールの策定)
ビジョン・ミッション・バリューを作成したら、それを社内にどのように定着させていくかを検討します。コンセプトブックのように本の形にしたり、ビジョンムービーのように、目で見てイメージできる映像にしたり、などが考えられます。また、もっとスピーディーに伝えたい場合は、社内ポータルサイトを使って、経営層からのメッセージという形で届ける方法もあります。M&Aなどで、ビジョンなどの浸透が急務である場合、もっと小さな単位、例えば部署ごとに管理職と社員でビジョンについて対話する会を催すなど、コンパクトに、ただし確実に浸透する方法を実行している企業もあります。優先順位や、期待したい効果に合わせて、アクションを設計しましょう。
4. アクション実行
3で設計したプランの通りに、アクションを実行していきます。
5. 振り返り、定着度の評価
アクションを実行した後、社内にどのようにビジョン・ミッション・バリューが浸透・定着したかを測定しましょう。特に「ミッション」は、社員の行動指針となりますので、それによって社員の行動が変わったか?良い効果が社内にもたらされたかを、定量&定性で計測し検証することが大切です。定性的には、「ビジョンなどの導入後、仕事に対する向き合い方は変わったか?」などのアンケートを取る方法があります。また定量的には、「エンゲージメントサーベイ」などの方法で、従業員と会社の関わりの深さを把握する方法もあります。
ビジョン・ミッション・バリューの導入事例(中小企業)
それでは実際に、カラビナが手がけた事例の中から、ビジョン・ミッションなどを策定したことによって大きな効果が得られた企業の例を見ていきましょう。中小企業やベンチャー企業などの事例です。自社への導入の参考になればと思います。
企業のスタンスが上手く伝わるスローガンを策定し、採用に成功した電気設備工事業A社様
千葉県にあるA社様は、公共施設の電気設備工事業で急成長を遂げている企業です。優秀な人材を必要としているにも関わらず、よくある電気設備会社と見られがちであったため、採用がうまくいかないという悩みを持っておられました。
私たちはまず、A社の理念・スタンスを明確にすることを目指し、「なぜ」を積み重ねて質問を繰り返しました。そこからわかったのは、社長の「顧客や社会からの信頼を得るための誠実な仕事ぶり」と、それを支える強い組織力を築くために「社員との良い関係を大切にする」という方針でした。顧客に対するスタンスは、ワークライフバランスやキャリア形成のための支援など、社内の従業員に対しても同じように向けられていました。私たちは、これがA社「らしさ」であり、ビジョンやミッションに繋がるコアだと考えました。
そこで、企業スタンスを「Sincerity in Quality(品質への誠実なこだわり)」というスローガンで表現。都心郊外の千葉で事業を行う際、地元で先進的な存在として見られることで、他社との差別化を図りたいという社長のご要望がありました。そのため、あえて英語のスローガンを採用したのです。
このスローガンをサイトに掲載してからは、「欲しい人材」からの内定をほぼ成功させることができるようになりました。国内トップクラスの通信会社の技術者の採用にも成功。勝因は、ビジョン・ミッション・バリューが理解できる内容を掲載したことで、応募者だけでなくその家族など周囲の人にも、企業の先見性や将来性、そして社員を大切にする姿勢が伝わるようになったこと。「Sincerity in Quality」というスローガンは、時代遅れの電設業のイメージを払拭し、現代に適した感覚を持つ企業としての印象を与えることに成功しました。
ビジョン・ミッション・バリューの導入事例(ベンチャー企業)
事業価値を再定義し、ミッションスローガンを言語化。新卒採用市場で成功を納めたS社様
中小・中堅企業向けのセキュリティ機器を提供するベンチャー企業S社様は、新卒の採用に悩みをお持ちでした。まだ社会を知らない学生は、どうしても派手で華やかな企業や業種に目を向けます。「縁の下の力持ち」的な存在であるセキュリティ事業はその点において不利で、合同説明会では学生が話を聞きにこないと嘆いておられました。
そこでカラビナでは、社長をはじめ、主要事業のキーパーソンや活躍する社員、そして最近入社した新卒社員など多数の人々の意見を丁寧にヒアリングしました。結果的に、知られていないのが勿体無いぐらい「とても良い会社」であることが判明しました。経営の透明性が高く、ポジティブな環境で、正直な方がとても多い職場だったのです。しかし、「セキュリティ」という言葉では、この魅力を上手く伝えきれません。
この課題を解決するために、企業の強み・事業価値を再定義し、「目力」というコンセプトを開発しました。セキュリティとは一見異なるように思えますが、事業内容を見れば、「人間よりも優れた目で社会を見つめる」というミッションとして定義できます。そして「社会にもっと、目力を」というスローガンを開発し、この新しいコンセプトを用いることで、イメージを知的で洗練された企業に一新しました。その結果、採用においても大きな成功を収めることができました。
新しい言葉の策定によって企業の強みが再定義されたため、それが社内に浸透し、採用担当者も事業説明の仕方を変えて話すようになりました。結果的に、企業の魅力や将来性が学生にうまく伝わるようになり、難易度の高かった上位校学生の採用にも成功しました。
ビジョン策定についてよくある疑問Q&A
Q. ビジョン策定を行う場合に、ビジョン・ミッション・バリューのすべてを構築するべきでしょうか?
A. 3つをすべて構築することにこだわる必要はありません。
ビジョンをはじめとする理念体系を整理したいというお客様によくある質問ですが、カラビナでは必ずしも、ビジョン・ミッション・バリューの3つを整えることを推奨してはいません。その理由として、これまでしっかりとビジョンなどの理念を構築してこなかった企業では、どれか一つでも大きな意味や効果があることが多いためです。
お客様の考え方にも依りますが、私たちは、ビジョンかミッションのどちらか(ビジョンをお勧めすることの方が多い)と、それを具現化するために必要となるバリュー=行動指針の2つの構築を推奨することが大半です。
Q. 古くからある社是や経営理念と新たなビジョンとの接続や関係性をどう整理すべきか悩んでいます。
A. 歴史のある企業の場合、こうしたお悩みを抱えているケースがよくあります。社是や経営理念がある場合、まず確認するのが、それが今どれくらい社内で浸透しており機能しているかというポイントです。例えば、社是にある精神は今もある程度、大事にされてはいるが、言葉が古く難解で若い世代を中心に親しめない層が増えている、または、社是の考え方は今も大切だが、それだけでは時代に合わずチューニングが必要と言った場合。こうした時は、時代とお客様の課題にあった形で、社是の精神を宿しながら現代に合う表現に作り直すことがあります。
また、経営理念に多いケースとして「信頼」などあまりにも意味が大きく解釈が曖昧になりやすいなどの言葉の問題や「業界のトップを目指す」など順位や量的な目標になっており、「どんな世界を作りたいか」「何を持って貢献したいのか」が見えにくいケースなどは、理念策定時の原点を掘り起こしながらも、今の経営陣や社員の意志や思いを汲み取ってゼロからに近い形で開発していきます。
Q. ビジョンは作ったものの、形骸化してしまっている場合、どのようにするべきでしょうか?
A. ご相談の中でも、よくあるお悩みです。ビジョンが形骸化してしまう要因は大きく2つ。
1つ目は開発や言葉の選定プロセスに問題があったケースです。ビジョン開発は、単なる言葉選びではないため、経営層や社員などを巻き込んで開発過程から”自分ごと化”しやすい状態を作ることが大切です。にも関わらず”なんとなく雰囲気がいいから選んだ”、”社長の思いつきだった”など、言葉の背景に戦略性や深みがない場合は形骸化しやすいと言えます。
2つ目は、ビジョンで意味する内容や言葉そのものは良いものの、社員に浸透するための工夫がなされていないケースです。本来ならば、開発時から社員を巻き込み”自分ごと化”するのが望ましいものの、このようにビジョン開発時にチャンスを逃してしまった場合は、同じような効果を生むためにバリューの開発を社員や経営層を巻き込みながら行い、その後にイベントや広報、評価制度、アワードなどの仕組みを整えて浸透を図っていくなどの解決策があります。
Q. せっかくビジョンを策定したものの、一向に効果が出てこないのはなぜでしょうか。
A. ビジョンを策定しても、社内の雰囲気が変わらない。よいアクションが見えてこない。エンゲージメントが上がらない。といった場合は、社員の中でビジョンへの理解や咀嚼、共鳴が不足していることが考えられます。経営サイドでは「ビジョンをポスターにして掲示するなどの努力はしているのに…ということもあり得ます。字面ではわかるけれど、それがどれだけ自分にとって重要で意味があるのか。それを理解してもらうためには、ビジョンを咀嚼するための参加型のワークショップやビジョン研修、ビジョンに該当するような事例を集めて現実の業務とビジョンとの接続を図る、などの方法があります。
Q. ビジョンを策定する上で、最適な時期はありますか?
A. ビジョン策定は、経営のどのフェーズで行っても意味があり無駄にはなりません。しかし、お勧めのタイミングはやはり区切りの時期、つまり経営ステージが変化する時です。少人数の企業から50名、100名、300名と人数が増え、経営者の思いが浸透にしにくくなった時。ビジネスモデルが変化し、価値観を変える必要があるなどの変革期。IPOなどやホールディングス化のタイミング。また、企業ブランドを見直したいと言った時にも、プロジェクトの基礎としてビジョンを見直すことも有効です。
Q. IPOやホールディングス化の際に、ビジョンを策定するべきでしょうか。
A. IPOやホールディングス化を行うなど、経営の見直しの時期にビジョンの策定や再整理はとても有効です。IPOなどの場合では、上場を通して自社がどのように社会に貢献していきたいのか、どんな世界を作りたいのかを整理することで、社内には意識変革を、社外には新たな期待を呼び起こすことが可能です。
一方で、持ち株会社を作り、これまでの事業部を子会社として傘下に置くと言ったケースでは、そもそも各社がどのような社会を目指すのかと言った方向性=ビジョンを整理するだけでなく、「グループ全体としてどこに向かうのか」も整理。その上で、同一グループらしい空気感や価値観を得られる内容や言葉にしていくことが必要です。ここを間違えてしまうと、各子会社が部分最適で動き出してしまい、せっかくグループという規模の強みがあるのに、単一でパワーの弱い企業集団に見えてしまうこともあります。こうした経営の転機こそ、深い経験のあるプロフェッショナルとの協働やアドバイスが有効なのです。
ここまで、ビジョンの定義を中心に、ビジョン・ミッション・バリューの定義やメリット、策定方法などを見てきました。私たちカラビナは、経営や組織に関わるコミュニケーションを、クリエイティブの力で加速することを志しています。どんな企業にも、経営者の強い志や、社会に対する想いが宿っているもの。ですが、それが見えにくくなったり、うまく内外に伝わらなかったりする時には、ぜひ私たちにご相談ください。高いヒアリング力・洞察力を用いて御社の強みや文化を引き出し、論理と感情の両方から人の心に訴えかけるビジョン・ミッション・バリューを言語化します。
さらに知りたい方へおすすめの資料はこちら
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ここではミッション、ビジョン、バリュー(MVV)、それぞれの意味や作成方法、その効果や浸透策についてご紹介していきます。企業はミッション、ビジョン、バリューなどの理念体系をまとめることで、自社が目指す方向が明らかになるなど、組織や経営に与えるメリットは多数あります。一方で、どの会社でも言えるような、ミッション、ビジョン、バリューになってしまうと、むしろ社員を迷わせてしまったり、企業への尊敬を薄めてしまったりするケースもあります。経営戦略とも密接に絡みながら、自社の目指すべき方向性やどのように社会に価値を返すかを定義していくミッション、ビジョン、バリュー。自社らしい価値を磨き上げることで、企業の成長に寄与する効果を生み出していきたいものです。人気カウント79
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従業員も社会も賛同しやすいミッション/ビジョンとは? | カラビナ
様々な企業のミッション/ビジョン作成のお仕事をお手伝いする中で気づいた課題についてご紹介します。経営や組織、事業と深く関わる企業理念やミッション/ビジョンは、分かりやすく魅力的であることは重要です。#ミッション/ビジョン#ミッション#ビジョン#スローガン
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