3C分析入門|スタバ・タリーズ・ドトールを題材に、考えてみよう
人気カウント19
マーケティングの勉強をしたことがある方なら、一度は耳にしたことがある3C分析。これは、数あるフレームワークの中では珍しく日本で生まれたもの。日本の戦略コンサルタントの草分けとして名高い大前研一さんが開発したものなのです。
さて、そんな豆知識はともかくとして、シンプルでいて奥の深いこの3Cフレームでの分析術を、これからさまざまな企業を題材に試していくのが本企画です。
その狙いとしては、ぜひ3Cフレーム分析をご自分の仕事の中で「使いこなして」いただきたいから。知識として「知っている」と、何かの目的を持って「使いこなせている」とでは、向き合い方が違ってきます。
ただし、こうしたフレームワーク全般に言えることですが、これは正解探しではなく、あくまで「仮説」を作るためのもの。自分なりの仮説をもとにしてクライアント企業と向き合ったり、自社の戦略作りに役立ててください。また、もう一つの注意点は企業は生き物であること。この分析時点での情報が明日、塗り替えられていることもあることはご理解ください。狙いは、あくまで自分なりの「見立て」を作ること。「こういう問いの立て方がある」と知って、そこから企業を分析するよう深い知的な探検の世界を味わってみてください。
3C分析とは何か、まず確認しておこう
3C分析とは、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの軸から、自社のポジションや強みを考えるための思考の型です。
ただ、この3C分析は、誤解もされがちです。
どこか、この分析を「競合と自社の情報を並べること」だと思っている方が多いのではないでしょうか。これは一見、客観的で科学的な態度に見えますが、それだけでは使いこなしているとは言えません。
3C分析で最も重要なのは、「顧客」を起点に置くことです。顧客が、どんな狙いで、どんな価値観で、どんな事情でそのサービスや企業を選んでいるのか。その問いを軸に、競合と自社を見ていく。そういう思考の型です。顧客を起点に置くと、見える景色がかなり変わります。さあ、具体的に試してみましょう。
今回の題材:スターバックスコーヒー・タリーズコーヒー・ドトール
今回取り上げるのは、スターバックス、タリーズコーヒー、ドトールコーヒーの3社です。
「コーヒーチェーン」という括りでは似ているようで、実はかなり異なるブランドです。そして、同じ人が、日によって、時間帯によって、この3社を使い分けている。そんなシーンは珍しくないはずです。アポの合間にドトール、お昼にタリーズ、休日の午前中にスタバ——そんな使い分け、思い当たりませんか。なぜ同じ人がこの3社を使い分けるのか。そこに、3C的な問いが生まれます。*この分析におけるドトールは、駅前小型型の旧来からあるドトールブランドに絞って行っています。
Companyを見てみよう.
まず3社の基本的な特徴を、フラットに並べてみましょう。ここで評価はせずに、「こういう違いがある」という事実の確認に重きを置きましょう。
スターバックス
- 1971年、アメリカ・シアトル創業。イタリアのエスプレッソ文化をアメリカ流に再解釈し、新しいカフェ文化を生み出した
- 日本には1996年に上陸。「サードプレイス(家でも職場でもない場所)」という概念を広めた
- スタッフを「パートナー」と呼び、戦略的に育成。顧客の名前をカップに書く、名前を覚えるなど独自のホスピタリティを持つ
- 店内調理メニューは基本的になく、コーヒーの香りを優先した空間設計
- コーヒー(Tallサイズ)の価格帯はおよそ430円前後。3社の中で最も高い
- 空間体験・ブランド価値・メニュー開発力が競争優位の源泉
タリーズコーヒー
- 1992年、シアトルで創業。スターバックスと同じシアトル発祥で、シアトル3大カフェチェーンのひとつ
- 創業当初からスターバックスに隣接して出店する拡大戦略をとっていたことで知られる
- 日本には松田公太氏がタリーズ本社に直談判して権利を獲得、1997年に銀座に1号店を開いた
- スタバとの大きな違いは、パスタやフォカッチャなど調理系フードメニューが充実していること。食事としても使える
- 店舗はスタバより広めでゆったりした作りが多く、適度な距離感の接客スタイル
- コーヒー(Mサイズ)の価格帯はおよそ420円前後。スタバに近い中価格帯
ドトールコーヒー
- 1980年、東京・原宿に1号店がオープンした日本発祥のコーヒーチェーン
- 駅前や繁華街への立地が多く、回転率を重視した設計。一人当たりの座席面積は3社の中で最もコンパクト
- 手早く提供され、滞在時間が短めになる傾向がある。平日の朝・昼に満席になるイメージ
- ミラノサンドをはじめ、フードメニューの品質は確か。喫煙席がある店舗も多い
- コーヒー(Mサイズ)の価格帯はおよそ280〜330円。3社の中で最もリーズナブル
- 「薄利多売モデル」の完成形に近く、低価格帯ながら安定した収益構造を持つ
この時点で、価格だけ見ても戦略の違いが浮き彫りになります。スタバ430円・タリーズ420円・ドトール280〜330円。単なる価格差ではなく、それぞれが提供しようとしている「体験の違い」の表れです。
Competitorを考えてみよう
では、3社それぞれにとっての競合はどこでしょうか。同じ「コーヒーチェーン」という括りで並べるだけでは、見えてこないものがあります。顧客が「その場面で、何と比較して選んでいるか」から考えてみましょう。
スターバックスの競合
スタバの競合として、どんな場所が挙げられるでしょうか。
- タリーズ・ドトールなどのコーヒーチェーン
- ホテルのラウンジ
- 地場の個人経営カフェ
- 有名スイーツ店(パティスリーなど)
- 公園や図書館
並べてみると、競合はコーヒーチェーンの枠を超えています。「空間・居心地・オリジナリティ」が、実は求められているのかもしれません。また、こうした場所が近隣にない場合に、セカンダリーとして選ばれている可能性もありそうです。
タリーズの競合
タリーズの競合として、どんな場所が挙げられるでしょうか。
- スタバをはじめとするコーヒーチェーン全般
- ファミリーレストラン
- 地場のパスタ店・イタリアン
- 個人経営のカフェ
「ランチをどこで食べるか」という文脈に入り込むと、競合の顔ぶれがガラリと変わります。フードメニューの充実が、タリーズの競合構造を複雑にしているのかもしれません。
ドトールの競合
ドトールの競合として、どんな場所が挙げられるでしょうか。
- コーヒーチェーン全般
- コンビニのコーヒー・カウンター席
- 自動販売機
- 駅そば・立ち食い系
- マクドナルドなどのファストフード
並べてみると、「隙間の時間を手早く、安く過ごす」という需要を中心に競合が集まっています。コーヒーを飲む場所というより、10-20分という半端な空き時間をどう使うか、という問いの中で選ばれることもあるのかもしれません。
Customerを考えてみよう
では、それぞれを使っている人は、どんな人でしょうか。
スターバックスのCustomer
スタバを使う人として、どんな人が思い浮かぶでしょうか。
- 休日の午前中、ゆっくり過ごしたい人
- いい雰囲気の中でじっくりを企画を考えたいビジネスマン
- ブランドのカップを持ち歩くことに、ある種の自己表現を感じている人
- 作業や読書など、長時間滞在を目的にしている人
- 季節限定メニューを楽しみにしている人
- スタッフに名前を覚えてもらう、特別扱いされることに心地よさを感じる人
並べてみると、「コーヒーを飲む」以上に「その場にいること」「その場で自分がどう扱われるか」「ここにいる自分」に嬉しさや喜び感じている人が多そうです。空間や体験、そしてホスピタリティそのものに価値を感じているのかもしれません。
タリーズのCustomer
タリーズを使う人として、どんな人が思い浮かぶでしょうか。
- 昼食を兼ねて、落ち着いて過ごしたい人
- 落ち着いて本を読んだり会話をしたりしたい人
- スタバほどブランドを意識するわけでもなく、ドトールほど急いでいるわけでもない人
- スタバほど気取っていない空間が返って安心な人(高齢者など)
- コーヒーだけでなく、食事もしっかり取りたい人
タリーズには、タリーズファンだけでなくスタバファンが訪れている可能性もあります。共通するのは、コーヒーだけでなく時間を自分らしく使いたい人。また「適度な落ち着き」があるけれど、「食事のクオリティも低くない」という強みもあるため、幅広いシーンで活用されていると考えられます。
ドトールのCustomer
ドトールを使う人として、どんな人が思い浮かぶでしょうか。
- アポとアポの合間、短い時間を効率よく使いたい人
- 通勤前に一杯だけ飲んで、気持ちを切り替えたい人
- 価格を抑えつつ、コンビニより落ち着ける場所を求めている人
- 平日の朝・昼、目的を果たしたらすぐ移動する人
- 限られた時間と価格で軽食を取りたい人(朝・昼)
並べてみると、「隙間の時間に、手早く、安く」という目的がはっきりしている人が多そうです。コーヒーそのものより、「次の行動への準備」として使われているのかもしれません。
3つの軸を重ねると、何が見えてくるか
Company・Competitor・Customerの3つの軸を重ねると、3社が「住み分けたプレイヤー」として共存していることが見えてきます。
スタバは「空間・ホスピタリティ・自己表現」の場として。タリーズは「落ち着きと食事、中間的なニーズ」に応える場として。ドトールは「生活の隙間を埋める実用性」の場として。それぞれが異なる戦略を持ち、異なる場面のニーズに応えています。
そして消費者は、それを賢く使い分けています。ドトールしか行かない人もいます。でも、シーンによって3社を使い分ける人もいる。マーケティングで問われるのは「誰に選ばれるか」だけではありません。「どんなタイミングに選ばれるか」という問いも、同じくらい重要なのです。
とはいえ、これも一つの「見立て」「仮説」の一つ。カスタマーの中には、「スタバのフラペチーノでないと絶対にダメ」というマニアもいるかもしれないし、ドトールのアルバイトスタッフとの朝の会話を楽しみにしている人もいるかもしれません。
また、今回の分析を振り返っても各社の戦略がある程度、現実と釣り合っていることが窺えます。パートナーの教育に力を入れ、店舗での体験に力を入れているサードプレイスのスタバ。その取り残した、「食」や「関わりすぎない」スタンスをとりに行っている万人受けするタリーズ。忙しい人のための「時間」に焦点を当てたドトール。まさに、戦略や理念が現場にも落とし込まれているのも面白いポイントです。こうした問いを立てる機会をヒントに、ぜひ、「自分のサービスは、顧客のどんな場面に潜り込めているのか」と考えてみるのも良いでしょう。
おわりに
3C分析の面白さは、答えを出すことより、問いの質が上がることにあります。
「自社の強みは何か」という問いは、内側を掘っても答えが出にくい。でも、顧客を起点に競合と自社を並べてみると、見えなかった輪郭が浮かんでくることがあります。
次回は、ちょっと意外なAmazonとCOOP(生活協同組合)を題材に、3C分析を試してみます。一見まったく異なるサービスに見えながら、同じ顧客が両方を使っているケースがある。そこにどんな問いが立つか、一緒に考えてみましょう。
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