課題ってどうやって見つけていますか?~戸部に聞きました/後編~
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- コピーライター兼ディレクターの岡村です。この仕事をはじめて、約5年。
- どうやって課題を見つけて、企画やコピーを書いているのか?を戸部に質問したコラムの後編です。
- 前編の「課題の芽は違和感」という話から、さらに課題のあぶり出し方や、企画を考える時にやっていることなど具体的ことを聞いてみました。
課題を見つけるには仮説を立ててみる。
岡村:「おや?」と思ったことが、課題を見つけるきっかけになるってことですよね。
戸部:そうそう。たとえば、採用がうまくいっていない企業とか、難しいと感じている企業って多いよね。それは逆にいうと、ほしい人が集まらないとか、moreを求めている企業が多いということ。有名企業でも普通に内定辞退が起きているなかで、それにも関わらず「うちは問題ありません!」って言われたら、問題自体がわかっていないんじゃないかって思うのが自然だと思わない?
岡村:そうですね。
戸部:だから、課題を見つけるために“相場感”は大事。一般的なケースと比較してズレがあると、良くも悪くも「おや?」となるはずだから。その課題にクライアントが気づいていないケースもあれば、既に認識しているケースもあるよね。
岡村:クライアントが課題に気づいていないケースって、どうされていたんですか?
戸部:過去に採用ブランディングを担当した新聞社様の例だけど、まず仮説立てから始めて。当時もすでにWebメディアが力を持っていたんだけど。ところで、今時の優秀人材が新聞社を志望するイメージってある?
岡村:できる人というか頭の良い人が志望するイメージ。あとはまっすぐに新聞記者志望の人とか…。でも、今は魅力的なWebメディアが溢れているからどうでしょうか…?
戸部:そうだよね。でも、頭が良いとかできる人って自分から遠い人のように捉えてしまうと仮説が立てにくくなると思わない?
岡村:確かに、そうですね。
戸部:逆に、就活生に人気の企業ってどこだろう?と考えると見えてくるよ。優秀層の学生だったら戦略コンサル会社とか、総合商社も強いよね。なんとなく皆が憧れていそうな有名メーカーもありそう。メディアだとテレビ局もあるかも、とかね。なかでも頭の良さと行動力もあるパワー人材みたいな子たちは、そういう企業に行きそうじゃない?では、誰が新聞社を受けるの?というと、さっきのパワー人材より落ち着いた学生が志望してきそうだぞ、と。
岡村:なるほど。
戸部:今度は新聞社側の視点に立ってみるけど、きっと誇り高いと思うんだよね。世界中からまだ誰も知らない情報を発信する意義を感じていそうだ、とか。各国の要人や政治家を相手に取材したり、犯罪を起こした人と話したりすることもある。そういう人は頭も切れるから、賢さは必要。そんな新聞社で輝く人材はトップエリートだと思っていそうだ、と考えて。でも、就活生の人気企業から見るとちょっと違っていて、おそらく認識がズレているのではないか?という仮設を立てた。
一般論と比べて、なぜ?を聞く。
戸部:もうひとつ、簡単な課題のあぶり出し方で、一般論をぶつけるやり方もあるよね。採用の場合なら、「一般的にここに悩んでいる会社が多いですが、御社はいかがですか?」と聞いてみる。そして「そうなんです」って言われたら課題が1個見つかったことになるよね。
岡村:おお!そうですね。
戸部:「うちは悩んでない」って言われたら、どんな工夫をしているのか聞いてみることで話が広がって、もっと奥にある本当の課題に気づけるかもしれない。そこから、さらに御社が一番解決したいことは何ですか?とか聞けるといいよね。基本何を聞くときもwhy?で聞く。
岡村:そもそも、「何が目的か」と考えられないと企画もコピーも出せないし、なぜ?を知るところからなんでしょうね。
戸部:そう。一番知りたいのは、クライアントがどうなりたくて、現実とどんなギャップがあるんだろう?ってこと。そこで、本来その企業が持っているポテンシャルが発揮されていないケースもあれば、例の新聞社のように自己認識にズレがあるケースもあるし。課題をあぶり出す時に、仮説を立てるにしても一般論をぶつけるにしても情報収集をすることは大事。
なりきって、いろんな目でみて、冷却する。
岡村:例の新聞社の採用ブランディングで、どのように提案まで考えられたんですか?自分だと仮説立てをする時にどうしても主観が入ってきて、要望に沿わない提案をしてしまいそうだな、思ったのですが…。
戸部:そうだね。その人になりきって考えることが大切。これはコピーライターにも必要な思考だよね。なるべく立場を切り替えて、いろんな視点になってみる。まずはクライアントの目線で考えていそうなことを、バーッとメモに書いて。たとえば自分が新聞社の人だったら、今はネットを通じて皆が情報発信できるけど本当のジャーナリストは自分たちだ、とかね。良いことも悪いこともメモに出す。一方で企画を立てる時には、客観性に見てどうだろう?ってやるんだよ。
岡村:なるほど。
戸部:なりきった後に一旦冷却して、客観的に見ると多角的な気づきがある。それをクライアントに提案する。ただネガティヴなことはそのまま伝えるんじゃなくて、ファクトを持っていくんだよね。当時有名企業に入社した新入社員100人が就活でどの企業に応募をしたかのアンケートをして。結果、新聞社を受けた子は1人しかいなかった。それも別の新聞社で。それを持って行って、クライアント自身に考えてもらうようにしました。
岡村:事実を見せて、どうしたいかを言ってもらうんですね。
戸部:アンケートを渡した時に「新聞ってこれからどうなるんでしょうね?」って話をしたんだよね。新聞は、一面に載るようなニュースから経済に家庭欄、テレビ、といろんな情報が載っているよね。マニアックにひとつのことを深くというよりは、広い視野でここに面白いものあり!と見つけられる人の書く記事の方が面白いんじゃないか。そういう学生の就活っていろんな会社に行って知見を広げたいだろうから、その子たちが興味を持ってもらえるような採用ブランディングを提案して、クライアントも「そうだよね」ってなったんだよ。
岡村:おお~。
戸部:やはり最初に仮説を立てることが大切。仮説がないと課題も出にくい。仮説を持たずに「課題は?」って聞くんじゃなくて、仮説を検証するために質問をしていくんだよね。
岡村:情報収集で3Cがありますが型がある分、提案の切り口も決まってしまいそうな気がしていたんです。でも3Cもしっかりやった上で仮説を立てて考えれば、企画やコピーもユニークになりそうですね。
戸部:そうそう。3Cの段階では、情報が多い方がいいので、見つかった情報をどんどん集める。できれば、情報収集した後とか、思いついたことをメモしたり企画書やコピーを書いたりした後も、一度冷却期間を置いた方がいいよ。
岡村:一気にやろうとしない、ってことですね。
戸部:やっぱりずっと側に張りついていると、判断ができなくなるんだよ。特に企画は多角的にやるのが良いから作業をしたら一旦休むとか別の案件をやるとか、蓋をして冷却しないと。そして、改めて自分の目線、クライアントの目線、さらにクライアントの顧客の目線、あとはもっと俯瞰で見た神様目線で、見直してみる。考えた時は良いと思ったけどそうでもなかったとか、これはキラリと光ってたから間違いがないなとかさ。考える時は一旦寝かせる、発酵させる、っていう冷却期間が大事なんだよ。
岡村:ありがとうございます。
企画書やコピーを書く前が難しいと思っていましたが、深く情報を集めて考える時間なのだと改めて感じました。この時間を濃いものにして、よりよい提案をしていきたいです。
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