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2023.05.23

わたしコラム|やりたいことリスト⑤赤べこを迎える

やりたいことリスト 

2020年のいつ頃だったでしょうか。電車に揺られていると、ついつい見てしまう電車の映像広告。
ある日何気なくディスプレイを見ていた時のこと。女優の綾瀬はるかさんが会津地方のとある工房を訪ね、伝統の郷土玩具である赤べこを紹介されていました。友達やおばあちゃん家の棚やテレビ台の隅でゆらゆら首を動かしているイメージが浮かびつつ映像を見続けていると、ぱっと目に飛び込んできた青い赤べこに目が釘付けに。

鮮やかで澄んだ青色に白い波紋様。なんて綺麗な色だろう。その丸みのある体に愛らしいまんまるの目。うんうん、と首を振る柔らかいリズム。数十秒ほどの短い映像だったかと思いますが、鮮烈に脳裏に焼きつき離れなくなってしまったのです。

気づけば手元のスマホで「青べこ」と検索。どの大きさを買おうか悩んでいる自分がいました。
それから、来る日も来る日も青べこが頭から離れず、これはお迎えするしかないとある日意を決してポチり。ところが、時節はパンデミックの最中。疫病除けのご利益があるとされる赤べこにコロナの早期終息を願い、注文が殺到。さらには翌年の干支が丑というのも人気に拍車をかけ一気に品薄状態に。大変申し訳ありませんが生産が追いつかずお届けの見通しが立ちません・・と注文は強制キャンセルに。動揺しながらもこれだけ多くの人の心を掴むなんてさすがね・・・と妙な悟りを開いたオタクマインドで切り替え、他のECサイトやアンテナショップを覗いてみたりもしたのですが、なかなかお目にかかれません。

色々と情報を得る中で、あの日の映像で紹介されていたのが野沢民芸さんという工房で作られた青べこで、他にもユニークな赤べこを色々と世に出されていることを知りました。
獅子舞べこ、千両べこ、赤や青以外にもカラフルなべこ。中でもヘッドフォンべこなんて、音楽に乗って揺れているようでとってもチャーミング。
いつか会津若松を訪れた際に出会えたらいいなとそんなことを思いながら、細々と赤べこのがちゃがちゃをコレクションしながら日々を過ごし数年が経ちました。

公私共に落ち着いたタイミングで少しゆっくりしたいと思った時に「そうだ、会津若松に行こう」と思い立ちました。脳裏に浮かぶ想像のポスターには、赤べこ。ついでに温泉に入るのもいいな。
残念ながら野沢民芸さんのお店はお休みだったのですが、幸い近所の工芸店に取り扱いがありました。青べここそいなかったものの、オーソドックスな赤べこも最近ようやく入荷したとのことで、この日無事に旅の目的を果たすことができたのでした(東山温泉も最高でした)。

その愛らしさもさることながら、いつも変わらぬ態度でうんうんと何かを肯定するように首を揺らす。その人間の心拍のようなリズムを数えていると、不思議と心の平穏が保たれる気がするのです。

Written by
FUMIKO TAIRA

WEB DESIGNER

前職では輸入玩具や公園の大型遊具を扱う専門商社で公園や遊び場づくりに携わる。 ひとつのプロジェクトを形にしていく中でプロダクトやサービスの価値や想いを届ける仕事に興味を持ち、WEBデザインの世界へ。好奇心旺盛で常に何かにハマっているが、特に音楽と旅と映画が好き。うどん県出身。