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2023.03.07

クリエイティブに触れて|舞台「笑の大学」

クリエイティブに触れて 

舞台「笑の大学」を観てきました。三谷幸喜さんの代表作と言われながら98年以降上演されることなく(映画にはなったのですが)実に25年ぶりの再演です。前回も観に行っているのですが、もうあれから25年も経つのかと思うと自分の年齢にも怖いものが・・・。

まずは、あらすじをサクッとご紹介します。戦時中に喜劇を上演するには、検察の検閲を受けなければならなかったのですが、その台本をめぐって劇作家と検閲官が丁丁発止を繰り広げるというもの。生まれて一度も心の底から笑ったことのないという検閲官がなんとか公演中止にしようと無理難題を吹っかける、対して「笑い」に命をかける劇作家は無理難題に苦悩しつつも、なんとか「笑い」を残しながら書き直す。そんなやり取りが何度も続いて、そしていつしか二人の間に・・・的なお話。出演は検閲官に内野聖陽さん、劇作家に瀬戸康史さんのたった二人だけ。舞台転換もなく、取調室に机と椅子が2脚あるだけというシンプルすぎるほどのセットの中で、二人だけで休憩なしの2時間弱を突っ切るなんとも濃密な時間。

舞台の模型です

最初は静かな始まりから、徐々に畳み掛けるように笑いの連続へ。そして最後はなんとも言えない切ない幕切れ。コメディだから笑える、コメディだけど泣ける。ある意味王道ではあるのですが、その展開が絶妙で素晴らしすぎる!二人の役者さんのうますぎるほどの演技も相まって、今更ながら、やはり恐るべし三谷幸喜!です。約25年ぶりの再演にもかかわらず、決して色あせることなく、時空を超えても観る人の心を激しく揺さぶってくれたのです。そして時代は違えど、今も目に見えない権力からの圧力とそれに従わなければならないことやSNSによる「表現の自由」の捉え方の変化やコンプライアンスについてのことも少し考えさせられた気がします。

三谷幸喜さん曰く、自分の作品が今後残る必要は全くないと思っているとのことなのですが、この作品は過去に英語、フランス語、ロシア語、韓国語、中国語などに翻訳され、上演もされています。そしてこの作品のテーマの普遍性を考えると、後の時代へも受け継がれていくべきものなのではと思ったりもします。

なので当然次回の再演も楽しみになるのですが、自分の納得のいく役者でないと上演はしない!との噂もあるので、はてさていつになることやら。。。

Written by
TAKESHI ITOH

DESIGNER

広告デザイン一筋に、各種クライアントの雑誌広告、新聞広告、ポスター、パンフレットなどの商業広告から、イベントブースの設計・デザインなどの制作業務全般に携わる。現在もグラフィックデザイナーとして現場を兼ねつつ、アートディレクターとして、企画・提案から制作・進行管理までを担当。