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2023.02.07

クリエイティブに触れて|猫をはしご

クリエイティブに触れて 

2023年の映画初め、「どの作品を観ようかしら~」と映画館の上映スケジュールを眺めていると1月の始めは有楽町で猫映画のはしごができる!と気づき、実際に猫映画を2本観てきました。

ここ数年、猫が気になるのです。猫好きの方に怒られてしまいそうですが、やっと猫の魅力が分かってきた、といえばいいのでしょうか。もともと身近に猫がいなかったので、どう接していいのか分からなかったのです。気まぐれそうだし、気が合わないと思っていました。数年前にSNSで、ずんぐりむっくりとした風貌で猫らしからぬおっとりした子を見つけて「この子なら仲良くなれそうな気がする」と思い始めて以来、他所さまの猫ちゃんに「いいね」をする毎日です。そこから、猫のかかりやすい病気のことや暮らす環境のこと、動物を家族に迎えることについていろいろと知ったり考えたりすることが増えてきました。

今回観た『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』と『猫たちのアパートメント』は、「猫かわいい」を期待して観に行ったものの、いい意味で裏切られる作品でした。

一本目の『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は、19世紀末から20世紀にかけて、イギリスで大人気だった猫画家ルイス・ウェインの伝記映画です。擬人化した猫のイラストは、鼠駆除のための存在だった猫を人と暮らすペットへと地位を上げたといわれています。タイトル通り、妻と猫を愛したルイス・ウェインの人生。コミカルでかわいらしいイラストから晩年のサイケデリックな作風へと変わっていく様子は観ていて少し苦しくもありました。たくさん出てくるかわいい猫やイラストよりも印象的だったのは度々ルイス・ウェインが口にする「電気」のこと。心揺さぶられるような美しいものに出会う瞬間は至るところに溢れていること、それを誰かと共有する喜びについて、じんわり考えさせられる作品でした。

二本目の『猫たちのアパートメント』は、韓国のドキュメンタリー映画です。ソウル市内に建つ、かつてはアジア最大といわれた遁村(トゥンチョン)団地。再開発による解体、この団地で暮らす250匹の地域猫を安全な場所へ移住させるために活動する女性たちの姿を追いかけた作品です。住民が去る中、廃墟化する団地に何も知らずに暮らし続ける地域猫たち。地域猫の移住活動を行う女性達と、これまで地域猫たちと団地に住んでいた「猫ママ」達が対話を重ねながら“猫にとっての幸せ”を考え、限られた時間の中で奔走する姿が優しい目線で描かれています。再開発という人間の都合によって居場所を失ってしまう“人間のエゴ”や、里親のもとへ行く猫もいれば新たな地域で地域猫として暮らす猫もいて、言葉を発さないからこそ“一緒に暮らす難しさ”について観終わった後もしばらく考えてしまいました。 まあるくふくふくとした地域猫たちが新しい場所で健やかに暮らしていることを願うばかりです。

Written by
SATOKO OKAMURA

DIRECTOR & COPYWRITER

大学時代はメディア表現学を専攻。フリーペーパーの広告営業、企業が発行する会報誌等の企画編集を経て、カラビナに入社。好きなものは1960~70年代のロックと映画、落語。映画好きが高じて映画館でアルバイトをしたことがある。肉全般と立ち食い蕎麦、どら焼きに目がない。