コピーって、どういうふうに考えて
書くんですか?
第一部のアップから、かなり(汗)時間が経ってしまい、お忘れのかたも多いと思いますが、R時代から、ずっと大尊敬する東秀紀さんと当社の制作社員たちと向かった飲み会にて、ポツポツと伺ったコピーについてのお話を、公開します。
トヨタの仕事でTCC最高賞まで受賞した東さん、というと、さぞ天才的なコピーライターで、最初からあんな空気のあるコピーを書いていたんでしょ?って思うかもしれませんが、はじまりは、そこのコピーを目指すみんなと、きっと一緒だったみたい。でも、考えて考えて少しずつ、いまの東さんになっていったのですね。ひとつ一つを面白がりながら、真面目にも考えてみる東さんの、そんなスタンスにもぜひ、ご注目を!
カッコいい文体に憧れて、でもやっぱ書けなくて、
ボディコピー作りに悩んでいた頃
コピーライターになって最初の頃は、秋山晶さんの文体に憧れて、自分でも書いてみたんだけど、5行くらいで「だめだ、カッコいいというより、臭くて気持ち悪い、無理だー」と諦めたんだよね。だから、最初はキャッチコピーだけで勝負するしかなかった。
その後、求人広告を作ってたから、企業の取材に行くようになって。そうすると、どんな会社でも何か見つかる。たとえば隣が女子大だったり。駅から近いのもいいけど、女子大から近いっていうのもいいんじゃないかなとか。社内に100円で買える自販機があったり、社員の人たちがみんな真っ黒に日焼けしていたり。はじめの頃は、そういったことを「●」つけて箇条書きにして羅列していたんだ。臭い文章より、事実の羅列のほうが、その会社にリアルに就職しようとしている人にとってもいいんじゃないかとか思って。やっぱり、そっちのほうが応募がすごく増える。まあ、どんな事実を見つけるというか選ぶかということが大切にはなるんだけど、わりとバカバカしいのも入れたりして、それが面白いんだよね。
で、デザイナー(っていうかエビナなんだけど)が、最初はアタマの「●」を揃えてレイアウトしていたんだけど、次に「●」を揃えないで流し込んでいくようになって、最後に「●」をとってしまったのよ。読んでみたら、ちゃんと成り立っていて、ボディコピーになっちゃったのよ。このやり方なら、俺、ボディコピー書けるかもと思った。
次に、最初の1行と、終わりの文章をおしゃれにすればいいんだなとは気づいたんだけど、驚いたのは、糸井重里さんの西武の正月の新聞広告。本文はすごく真面目なことが書いてるんだけど、真ん中あたりに「酔ってはいません、本気です。」と。その1行がすごく効いていて、なんか、心の声が置かれているんだなと思った。そういうのをヒントにしながら自分なりにやり方を考えていったんだ。
あと、みんなが悩むとしたら、語尾が「ます。」「ます。」「ます。」って続いてしまったりするじゃない。思い切って、どれかを体言止めにしちゃうとか。それと、話がうまくつなげられない時は、「さて」と書いて次の話にしちゃう。もう、自分がラクになる方法をずっと考えてきたかも。
最終的にボツにしたキャッチコピーを
ボディコピーに組み込むと、よくなる
仲畑さんもおっしゃられていたんだけど、キャッチコピーをいっぱい考えてると、あとあとラクになるかな。長期的にみると、自分のコピーの幅がいつのまにか広がっていて、仕事がしやすくなるし。短期的にはボディコピーがラクになる。キャッチは基本的には1個しか使えないじゃない。で、2番手や3、4番、5番手あたりのちょっと違った角度からのいいキャッチコピーをボディコピーに入れていく。そうするとボディコピーもだいぶ、キマってくる。何しろ、5番手までには選び抜かれている、いい言葉なんだから。
取材のメモには
感想や疑問を書き込んでいく
あと、僕の場合は、取材をする時にテープで録音してたりもするけど、基本はノートにバーッと書いていく。で、その取材中に、相手が話したことだけでなく、ふと自分が心で思ったことも書き止めておく。これ書いておくと、ボディコピーをつなげていくときに使えたりするし。あと、ボディコピーって、読者がこういう文章を見たらどういう疑問を感じるか、それに順番に答えていくことだとも思うんだよね。
自分のふつうの感情を
大切にしてるかな
シロアリ駆除の求人広告を作っていた時代があって。まあ、それまで、ちょっと社会から外れ気味の仕事の求人って「日当2万円以上」とか「月給80万円以上」しか書いていなくて。キャバ嬢の募集とかもね。たしかに給料がいいことが売りではあるんだけど、でも「月給80万円以上」という書き方そのものにもう胡散臭さを感じてしまうじゃない。信じられない感じというか。だから、なんか信じられる感じにすればいいんじゃないかなあと思って、「クソ、手取りになったら76万5000円になってしまった。」みたいなキャッチを作ったり、平均すると確かに80万円以上なんだけど、35万円の月があったり200万円の月があったりを正直にグラフ化して見せたりした。そうしたら、それまで毎回の応募が0人か1人だったのが、いっきに20人くらいに増えて。求人広告時代は、そういった実験的なことができたというか、広告の作り方によって効果が変わるということを実感できたことがよかったし、楽しかったね。
コピーってどう書けばいいんだろう?
をずっと考え続けているのがコピーライター
いいコピーってどう書けばいいの?ってなると、TCC年鑑を見たり、世の中のCMやポスターとか見るじゃない。べつに見ることが悪いことだとは思わないけど、陥りやすいのは、どこかで見たことのあるコピーに似ていってしまうことかなあ。コピーそのものをみるというよりも、なんでこういうコピーになったんだろう、を見ていったほうがいいのかもなあ。
「いいコピーを書こう」じゃなくて「いい考え方を書こう」って感じかなあ。「いい」って、真面目ってことだけじゃなくて、広告戦略上ふざけたほうがいいと考えたらふざけたコピーを書くでもいいと思うし。そうしていくと、コピーライターの仕事が、どんどん自分のものになっていくんじゃないかなあ。たぶん。
・・・と、ちょっと長いブログになっちゃったかもですが、東さんのあの口調もお届けしたく。戸部が東さんと初めてお仕事をさせていただいたのは、確か入社4年目くらい。駆け出しの制作として、「こういうふうにやりたい」と思っていたことの、その先が東さんの考え方の中にあって、それから何度もお仕事させていただき、時々、こんな感じでチラホラといいことを教えてもらいました。身近にコピーの先輩のいない私にとっては、そんな東さんの発したチラホラが道標、「こんな感じなのかねぇ」とコピーを書いてなんとか、今に至ります。おっと、感謝の言葉が長くなりましたが、コピーや広告の仕事を目指している皆さんに、少しでもお役に立てたら幸いでございます。では、東さんに拍手!!