クレド(価値観・行動規範)を一緒に考えました。 〜株式会社デザインエイエム様〜 | カラビナ
普段は採用促進やブランディング構築を目的とした、Webサイトやパンフレットなどの制作をご依頼いただくことが多いカラビナですが、実は、お客様が抱える組織課題の解決のために、ワークショップを開くこともあります。
今回ご登場いただくのは、ブランディングを得意とされるクリエイティブブティック、株式会社デザインエイエム様です。手がけているプロジェクトには、カラビナも参加させていただき、日頃から大変お世話になっています。2021年の終わりごろから、クレドを見直すお手伝いをさせていただいており、主にワークショップでの体験についてお話を伺いました。
ご登場いただくのは、アートディレクターでデザインエイエムの代表取締役でもある溝田様、ディレクターの草場様、小倉様です。(以下、敬称略。)
株式会社デザインエイエム
ブランディングデザインや、シンボルマーク、ロゴマーク制作などのグラフィックデザイン、Webデザインなど幅広く手がけているデザイン事務所。企業の見えない価値を共に探り出し、効果的に伝わりやすくカタチにすることを得意としている。国内のみならず、海外からの依頼も。1998年創業。
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20項目ものクレド、日常で意識しきれないことが見直しの発端。
西野 御社には20項目以上のクレド(価値観・行動規範)があるそうですが、会社設立からすでに設定されていたんですか?
溝田 数こそ少なかったのですが、会社設立から5年目ぐらいに会社として大切にしたいことをまとめ、リーフレットにして社員に渡していました。「ここは外せない」という項目が年々追加されていき、気づけばこの数になっていたという感じです。
西野 なるほど。大幅に見直すにあたって、何かきっかけがあったんですか?
草場 毎週の社内ミーティングでクレドの1項目をピックアップし、どのように実践するか話し合っているのですが、数が多くて日常で意識しきれなかったり、難しいものはどうしてもピックアップの頻度が少なくなったりして、もったいないという意見が出始めたんです。
溝田 そんな声を聞いてなるほどと思いました。創業から20年以上たつことですし、そろそろ整理が必要なのかもしれないと、社内で検討を始めました。
西野 そうだったんですね。整理をするにあたって、何か気をつけられたことはありますか?
溝田 ただ整理といっても、単純に数を減らすことはしたくないと感じていました。
「ここは外せない」と積み上げてきたものですし、私もみんなもクレドに対してそれぞれの想いもありましたし。
西野 確かにそうですね。2021年の12月にワークショップが行われていますが、御社で見直しが始まったのはいつ頃ですか?
小倉 社内で検討を始めたのは2021年の7月からでした。
西野 時間をかけて見直されていたんですね。
社内で議論スタート、そして盛り上がる!けれど、ゴールは・・?
小倉 長いんです。(笑)はじめは、クレドの基礎であり、わたしたちのスローガンでもある「デザインで明るい未来をつくる。」という言葉から、議論をスタートさせました。
溝田 そうでしたね。根本から見直すために「明るい未来ってどんな未来だろう」と社内で検討しました。社内では積極的に意見を出し合って、私には思いつかなかった新しい視点もあったりして、それはそれで有意義ではあったんですが・・・。
溝田さん
草場 考えが深まっているような、深まってないような空気が徐々に出てきて、議論が進んできたなと思ったら、巡っていたなんていうこともありました。
小倉 みんなスローガンやクレドに対して愛情を持っているし、毎週見直していることもあって、それぞれの描く未来が明確にされていく時間ではありました。議論は広がりましたが、おさまり所を見失っていたと思います。
西野 なるほど、そんな経緯があって、カラビナにお声がけをいただいたんですね。
当たり前すぎて見過ごしていた「価値」が浮き彫りになってきた。
西野 ワークショップは弊社の戸部がファシリテート役を務めたかと思いますが、具体的に、みなさんでどのようなことをされたんですか?
草場 デザインエイエムという会社について、「自分達はどう思うか。」をできるだけたくさん付箋に書き出して発表し、次に「お客様はどう感じているか。」も同じように発表しました。お互いの意見を、まずはフラットに見られる状態にすることが最初のステップでした。
西野 何か印象的な意見や、新しい発見はありましたか?
溝田 新しいわけではなかったのですが、お客様から「話を深く聞き出してくれる」という声がたくさん届いていることに改めて気付かされました。みんながホワイトボードに付箋を貼ってくれるまで、取り立てて高い価値だとは思っていなかったんです。
小倉 ワークショップだからこそ気づくことができた価値だと思います。デザインエイエムでは、ヒアリングシートを用いて本質を聞き出すことを欠かさず行っているのですが、もし、溝田に会社の強みを聞かれても、当たり前のことすぎてこの答えは出てこなかったのではないかと。頼まれたものをしっかり作ることがよしとされた前職では、顧客課題の深堀など考えもしませんでしたから。
草場 たしかにそうですね。私の中でも、お客様の課題を根本から考えることが当たり前になっていたので、社内の議論では見落としていました。“依頼されたものを作るのが制作会社”というスタンスの会社も多い中、わたしたちのようなタイプは珍しいのかもしれません。改めてお客様からの目線で見たことに意味があったんだと思います。
草場さん
溝田 まだ創業して間もないころ、ロゴやCIデザインの仕事が多くを占める時期がありました。毎回、ご依頼いただくのは起業や組織再編のタイミングです。制作は、お客様の事業の本質や経営課題を根本から見直すことからスタートしていました。その頃から大切にしていたことが、今のデザインエイエムを支えている、強みになっているのかもしれません。
西野 無意識的に実行されていると、強みとして認識しづらいのかもしれないですね。ワークショップで、改めてみなさんで共有できたのではないでしょうか。
溝田 そうですね。それに、社内でクレドを考えるにあたって、新しい何かを見つけなければと少し力んでいたのかもしれません。しかしワークショップを通し、自然と培ってきたことが強みになっていることに気づくことで、自らの価値に対して新しい視点を持つことができました。
西野 なるほど、新しい視点でご自身を見直せると、違う世界が開ける感じがしますね。この後のワークショップではクレドは進展していくんですか?
小倉 はい、戸部さんにリードしてもらって、驚きと共に。
小倉さん
クレドを見直すワークショップの中で、社内では見落とされていた価値が見出された様子を伺い、当たり前になっていることほど、自社の魅力として認識することが難しいのだと改めて実感しました。しかし、無意識のうちに実行されていたデザインエイエムの強みは、これだけではありませんでした。
まだまだあった、かくれた魅力
西野
新しい視点で見直すことで、貴社の魅力が再発見できた感じがしますね。これで、クレドを見直すためのキーワードが決まったのでしょうか?
草場
実は「お客さまに寄り添う」こと以外にも、「良い人間でいる」ことや「プロセスを大切にする」という内容の意見も多くあげられました。これも日頃から社長の溝田が普段から口にしていることで、「これも魅力だったんだ」と気づかせてもらいました。
西野
「良い人間であること」とは、具体的にどんな意味ですか?
溝田
ずっと大切にしてきたことでしたが、クレドにすら載せていないことでした。 クリエイターとしてプロダクトの質を追求することはもちろん大切ですが、その前に社会人として、人間として、誠実でいることが大切だと考えているんです。今あるクレドは、すべてここに通じると言っても良いかもしれません。そう言う意味では、うちのクレドのルーツですね。
西野
確かに基礎の基礎であり、とても大切なことですよね。
溝田
そうですね。一方で、何をどう指示すればいいのかはむずかしいところで、理念やクレドとして明文化はできていませんでした。でも社員のみんなが着実に体現してくれているおかげで、クライアントの皆様が評価してくださった。実行には人間力が必要なことですし、数値で測りづらいものなので、貴重な気づきをもらいました。
西野
もう一つ、「プロセスを大切にする」とはどんなことですか?
小倉
具体的には、デザインやWebサイトの仕様について丁寧に説明をしたり、お客さまの思いを丁寧に汲み取っていくことだったり、基本的なことだと思います。
制作期間中のお客さまとのやりとりで、しっかりと関係性を作ることができるかどうかも、プロダクトの質に大きく関わってきますし、これができると、お客さまはもちろん、作る側の満足度も高い。納品後もお客さまといい関係が続いて新たな案件のお声がけもいただき易くなります。
溝田
そうですね。「プロセスを大切にする」という言葉が出てきた時には、「そうそう、それを大事にしたかったからこのクレドにしたんだ!」っていう気持ちになりました。
「それだ!」と思える一言の発見
西野
なるほど、今後貴社がどうあるべきかを考えた結果「お客さまに寄り添う」、「良い人間でいる」、「プロセスを大切にする」というキーワードに集約されたわけですね。
草場
はい、社員が個々に思い描いていたことがまとまり始めました。社内で何ヶ月も話し合ってまとまらなかったことが、数時間のワークショップで本当にすっきりと(笑)。
小倉
まとまるまで早かったですね。戸部さんがみんなの意見を聞きながら、わかりやすいように言い換えてくれて、会話からヒントらしき言葉をピックアップしてくださったのが印象的でした。形容できなかったキーワードが、どんどん言語化されていったんです。
西野
会話の中で、これぞというキーワードは生まれましたか?
溝田
「未来さがしの旅」ですね。これは、コピーライターさんだからこそのファシリテートだなと、真髄をみた気がします。そうだ、「旅」だったんだと。一つのプロジェクトを旅に例えるとすごくしっくりきたんです。支度をして、目的地に向かう。目的地に思いを馳せながら、道中の景色も楽しみたい。途中トラブルもあるかもしれないけれど、協力しあって次へすすむ。全員の想いが「旅」という一言に集約されて、イメージがとても鮮やかになりました。
西野
確かにイメージしやすいですね。
価値を見つけにいく「未来さがしの旅」。
西野
キーワードが見つかったことで、お仕事の見え方に変化はありましたか?
小倉
理念やクレドが、普段の業務とリンクさせ易くなりました。今まではちょっと遠い目標というか、自分ごととして捉えるまで時間がかかると言うか。でも旅だと気づいてから「この状態、旅で言うとなんだろう」「目的地の1つにたどり着いたかな」などと考えながら仕事ができるようになりました。
草場
そうですね、私も理念やクレドがぐっと身近になったように思います。もしお客さまにこの「旅」の例えをお伝えできれば、より結束しながらお仕事ができるかもしれないと思っています。
西野
お客さまと1つのチームになることができれば、より良いものができそうですね。 「旅」というキーワードを見つけて、残すところワークショップはあと1回。次回は何をされるんですか?
小倉
次回は、その「旅」をもとに考えを深めます。自分達が思う良い旅とはなにか、もう少し長い文章で具体化するプロセスです。スタッフみんなで理解を深めて浸透させるような。
溝田
メインのコンセプトが「旅」と決まったので、ここから先は、自分達らしい「旅」を見つけて欲しいですね。お客さまへの寄り添い方や、自分達が目指す誠実さをじっくり考えていきたいと思います。
西野
デザインエイエムさんにお願いしたら、ブランドづくりという良い「旅」に連れて行ってもらえそうです!今日はお忙しい中、ありがとうございました。次回のワークショップが終わったらまたお話を聞かせてください。