かつてビジョンの開発に関わり、この度、改めて「ビジョンと行動指針」の構築を行った株式会社LiB様の、理念体系の開発プロジェクトについてご紹介させていただきます。
株式会社LiBとは
日本初のキャリア女性向け転職支援サービスの立ち上げを皮切りに、メディア事業、マーケティング事業などをはじめとする多彩な事業を展開。その社名の由来は、“LifeとBusinessの間に「 i(自分)」がある”という思いから。向こう3年ほどを目標に、さらに女性が、その能力を発揮できる社会。そして、ジェンダーに関わらず能力を発揮できる社会づくりを目指している。
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事業フェーズの進化にともない、新たに理念体系の再構築を。
もともと、当社ミッション「生きるをもっと、ポジティブに」もカラビナさんが開発したものでした。
この言葉は採用のシーンでも、これに惹かれた人というも多く、社内の評価も高かったのです。そんな中、改めて理念体系を整理しようと考え再び声をおかけしました。
改定にあたり、ベースとなる考え方は、カルチャー担当の私を中心に整理しました。
もともとLiBには、ビジョンやプライド(いわゆる行動指針にあたるもの)といった経営理念が存在していましたが、今回の改定では、これまでのビジョン「生きるをもっと、ポジティブに」をミッションに置き、直近で目指していく姿をビジョンに投影し、さらにプライド(行動指針)を見直そうと決めました。
事業の本質とともに、潜在顧客にも心地よく響くビジョンを。
まず手始めは、ビジョンの開発でした。
最終的には“女性のライフキャリアを豊かにする仕組みをつくる。”という言葉に落ち着きましたが、スタート時点では、もっと具体的に実現したいスキームをコトバ化していました。
当初は、今後女性のオフのシーンを豊かにするサービスの充実を図るため、ビジョンに、女性のライフやキャリアをよりよくする“エンジン”や“アクセラレータ”という言葉を使っていました。
しかし、何度か話し合ううち、カラビナさんから「この表現は女性から見ると、女性がビジネスの道具にされている感じがするのでは?」と指摘があったのです。エンジンは原動力でもあるので、意味としていいなと思っていた反面、社内で何人かに見せてみると同様な意見も出てきました。
女性の活躍を促進したいという想いを、顧客である女性たちにしっかりと、しかも、心地よく届けるには、どんな言葉がふさわしいのか。少しの違いで伝わり方が変化する難しさを実感しました。
さらに、言葉の骨格が固まった後も、名詞で終えるべきか、「つくる」などの動詞で終わるべきか、など細かな違いにもこだわって、言葉だけで勝負できるビジョンが出来上がったと自負しています。
社員の「合言葉」となり、気持ちよくアクションにつながる言葉を。
LiBでは、行動指針にあたるものとして「プライド」を置いています。すでに私の方で、3つの要素に絞っており、それぞれ「知=Act Smart」「情=Make Our Fans」「意=No.1Pride」と、仮に言葉を置いていました。
ここには、これからもキープし続けたいLiBの強みや付加していきたい文化などを込め、整理したものでした。これらについても、よりよい言葉になるようブラッシュアップをお願いしました。
プロジェクトの中で印象的だったのは、「知で勝つ」の意味を持つ「Act Smart」の改良でした。ここに込めたのはITの活用も含めた“スマートに知恵を使おうよ”“泥臭く頑張るだけでなく、もっと優れたやり方を考えていこうよ”という思いです。
その点で「Act Smart」は、意味としては正しいけれど、何か命令調に感じないか?というのがカラビナさんの考えでした。
行動指針が指令のように響いてしまうと社員たちはついてこない。“やってみたい”“やることが、かっこいい”と思える言葉にしましょうと、話しながら幾つもの案をいただきました。
そして、最終的に「Do it Smart」を選んだのですが、この言葉には“Just do it”的なニュアンスがあって、“君なら、スマートにどうやる?”というような、ちょっと楽しみながらチャレンジできる感じが出て、とてもよかったと思います。
また、発見だったのは、一つひとつの言葉にこだわるだけでなく、プライドの3つをみたときに伝わるメッセージやミッション、ビジョンと並べたときに見えてくるものも大切だという観点でした。
このアドバイスで、“面で見ること”の大切さに気付かされましたね。こうしたプロセスを経たことで、全体バランスを見ながら、分散、統合ができたことも良かったですね。
人事評価や社内表彰に、理念体系を応用していく。
策定した、理念体系は様々に活用されています。
まずは人事評価や目標設定にも、プライドの考え方を導入していますし、研修にも応用。
たとえば、中途入社者向けでは、プライド講座として、1時間を3回ずつに分けて、その意味を伝えるとともに、LiBで求められるアクションを伝えていっています。また、MVP選出の定義にも応用しています。
具体的には、「Make Fans」をしたとして、他者から評価された人を表彰の対象にしています。これまではどうしても、売上などの業績面に偏った表彰になりがちだったので、会社の評価としてもうまくバランスが取れてきていると感じています。
また、全社集会の後のランチでは、プライドに紐づくチロルチョコを作って盛り上げたり、スラックのスタンプを作ったり。プライドを単に会社からのメッセージとして遠いものにさせずに、楽しい思い出と紐づける工夫にもこだわっています。
そして、実際に社内でもこれらの言葉が流通してきています。
たとえば、何か提案したり、指摘する時などに、「これは、Make Fansに繋げるためだから」とか。オペレーションを改良するとき、「このままでは、Do it Smartじゃないよね」とか。経営の進度が非常に増している実感がありますね。
同時にみんなに対しては、「この理念体系に関しては、みんなが伝道師であり、発信する側になるんだよ」と、自覚を持たせています。
よき壁打ち相手でもあった、カラビナ。
カラビナさんとの共同作業の中では、学ぶこと、気づくことも多かったですね。
たとえば、ビジョンなどに使う言葉は、どうしても抽象的になりがちですが、その方向性が意図するところと合っているのかの確認の軸。また、含まれている意味の範囲を示す「含有量」などという言葉を知り、社内で案を通す際やみんなへの説明の際にも活用させてもらいました。
スタートから数えて、打ち合わせは5〜6回に及びました。
カラビナさんには、言葉の開発だけでなく、経営との話し合いの中で、不鮮明になってしまったところや私自身が迷った時などに声をかけさせていただきました。
コピーワークの面だけでなく、考え方を整理する「壁打ち相手」としても機能してくれたと思います。
また、コピーの専門家という面だけでなく、外からの目線を持ち、俯瞰的かつ客観的に意見をもらえたことも理念づくりには重要だったと思っています。
社内だけで考えても、一つの価値観に染まってしまい、一般的な感じ方とのズレは生じてしまいます。
そうしたときに、「この言葉では、こういう感じを与えてしまうかも」とか、「むしろ、そこは御社の強みだから、強調しすぎなくてもいいのでは」と、アドバイスをもらうことで、偏りのない、みんなごとになれる理念体系ができたのではないか、と考えています。
インタビュー
株式会社LiB
人事部長
CCO (Chief Culture Officer)
品川 皓亮 様
編集後記
LiB様は、当時のスタッフの方々とワークショップを行い、そこから「生きるをもっと、ポジティブに。」のスローガンを生み出した、思い入れの深いお客様です。
そのとき、「女性を対象に事業を行うとは言え、性別に偏ることなく、多くのひとの生き方をサポートすることを視野に入れるべきでは?」などと議論させていただいたことを懐かしく思い出しています。
そんなお客様が成長し、再びお声がけいただけた事がまずは本望!という感じで前のめりで(笑)、取り組ませていただきました。
エネルギー溢れる社員たちがぐんぐん引っ張ってきた、これまでのLiB様。そして、これからは、知性とヒューマニティを加味して、さらに社会を変えていくというフェーズへ。
企業の「成長過程」に、こうして立ち合えた事が純粋に嬉しいですし、今後のLiB様が起こすであろうポジティブな変化にも大きな期待を寄せています。